役人は再就職してはいけないのか~江利川毅の人事官選任について [政局]
【2009年11月05日】-鳩山政権は11月4日、江利川毅(62歳)を人事院の人事官に選んだが、メディアも自民党も天下りだと批判している。役人の再就職をすべて「天下り」と見なして禁止すべきなのなら、役人は退職した後どこにも勤められない。天下りを嫌悪するのは暴論だ。
そもそも天下りはなぜ駄目なのか。仕事らしい仕事をせずに高い給与と退職金をもらうからだ。しっかり仕事をして妥当な給料をもらうのなら、役人も再就職していいはずだ。
また役所がコソコソ斡旋する点でも駄目だ。今回は首相が決定して国会に同意を求めたのだから、コソコソではない。それに人事官は国家公務員だから、特殊法人などに「下る」訳ではない。
このように分析できない連中が、勝手に怒っている。役人の再就職をすべて「天下り」と捉えて、反対するのは暴論だ。産経新聞の阿比留記者も、ブログで反対した。保守派などと言っても、この程度だ。物事の表面しか見られないのだ。
・天下りの種類
前も書いたが、天下りは幾つかタイプに分けて考えるべきだ。
①ポストがなくなって、退職せざるを得ない場合。キャリア官僚は大体同時に昇進して行くので、出世するに従ってポストが減る。そのため特殊法人や外郭団体に再就職しなくてはならない。給与と退職金が高くないのなら、問題ない。
②定年まで勤めた役人が特殊法人などの幹部に再就職して、高給をもらう場合。これは問題だ。
③特殊法人などを幾つも渡り歩き、そのたびに高額の退職金をもらう場合。いわゆる渡りだ。これは大問題だから、即刻やめなければならない。やる気になれば、割と簡単にやめられると思う。政治家とマスコミが、転職を繰り返さないよう監視すればいいのだ。
もし渡りをした元官僚がいたら、メディアは即刻名前を公表し、役所はその団体を指導する。特殊法人などなら役所に監督権限がある。民間企業も指導できる。
ちなみに江利川は内閣府と厚労省の事務次官を務めて、7月退官した。その後、埼玉医科大学の特任教授だった。
・「江利川でないと公務員改革ができない」
今回の人事について鳩山首相は「省庁が斡旋する場合が天下りで、今回はそうでないから天下りではない」と答弁したが、形式論だ。本質は法外な報酬を得るかどうかだ。
人事院の人事官や総裁は国家公務員だから、給料はそんなに高くないだろう。江利川は厚労省を辞めた時に退職金をもらっているから、退職金はもう払わないようにすべきだ。
平野官房長官の方は国会で「事情を熟知している方が好ましい。天下りでも天上がりでもない。」と述べた。つまり江利川など OB でないと、公務員改革ができないという訳だ。
毎日新聞と読売新聞は5日付の記事に、今回の人選の理由をもっとはっきり書いた。「マニフェスト(政権公約)に盛り込んだ国家公務員制度改革を遂行するには官僚 OB に頼らざるを得ない」「鳩山政権が批判を覚悟で人事院の新たな人事官に江利川氏の起用を決めたのは、公務員制度改革を成し遂げるには『官僚OB』の協力が不可欠だと判断したためだ。」と書いた。江利川を起用するのは仕方がないのだ。
新聞記者が知っているのに、予算委員会で江利川について質問した菅義偉(自民党)や渡辺喜美(みんなの党)は知らなかったのだろうか。野党だから、知らない振りをして追及したのではないか。
民主党は去年、元官僚が日銀の総裁になることに反対したから、それと矛盾することは明白だ。民主党は党利党略から反対したのだ。今回、自民党に批判されても文句は言えない。
・危険な流れ
昨晩いつものように『ニュース・ウオッチ9』と『情報ステーション』で、野党議員が江利川起用を追及するやり取りを見ていて、危険だと思った。野党は天下りと批判する。テレビ局はそれを是認する。行き着く先はファシズムか暴動だろう。
J-CAST を見たら、TBS テレビの『朝ズバッ!』でも今日これを取り上げ、みのもんた氏は「国民が民主党に送った風を逆に押し返すつもりなのか」「国民の反発は必至ですよ。脱官僚してくれよという期待を込めていた。」と言ったそうだ。
野党とテレビが、役人の再就職は絶対駄目という短絡思考だから、一般国民は深く考えないまま政治家と役人を嫌うようになる。新聞が真相を書いても、じっくり読む人は少ない。
左翼メディアは衆院選前の8月中旬も、天下りと世襲批判で日本を潰そうとした。虚報も1回だけなら被害は少ないが、度重なると危険だ。大多数の日本人が本当に誤解してしまうからだ。
皮相なないまぜ報道が続く限り、日本は衰退し続ける。最後にはどうなるだろうか。(敬称略)
・参考資料
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091105ddm005010009000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091105-OYT1T00141.htm
http://www.j-cast.com/tv/2009/11/05053202.html
アメリカに暮らし10年以上が過ぎました。異国にいると、日本に住んでいた時よりも、国内のいろいろな問題の構造がよく見えるように思います。政治の混乱や、多数の自殺者、幼児虐待など、2つの国(或いはその他)の文化やシステムなど様々な事情を比較しながら、類似点や異なる点を見つけることにより、日本独特の解決策が生まれるのではないかと考えています。
東京で仕事をしていた時、当時厚生省にいらした江利川さんにたびたびお世話になりました。優秀と言うだけでなく、上から信頼され、下から慕われるすばらしい人柄をお持ちの方で、この記事にある「江利川でないと公務員改革ができない」というのがよくわかります。天下りがどうの、高給が、OBが・・・と言う前に、国政を任せるにふさわしい「最適任者は誰か?」に焦点を絞ることが、現在いろいろな面で下降線を辿る日本にとって最重要なのではないでしょうか? 異国に暮らす愛国者にとって、真心で国を煩い仕事をされる江利川さんの再登場は嬉しい限りです。
by NSS (2010-08-11 12:37)