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「大切は人へのおもてなし」における「への」は駄目(上) [*国語]

【2009年12月27日に掲載、28日に訂正】-昨日ソネット・ブログの管理画面に「47クラブ」の広告が出ていて、「最高の『ひと口』を、大切は人への『おもてなしに』。」と書いてあったので、驚いた。「への」もおかしな言い方だ。従来「大切な人のおもてなし」と言ってきたし、それで充分だ。

 「47クラブ」(よんななクラブ)は聞き慣れない名称だが、共同通信と加盟新聞が行っている通信販売のウェブ・サイトだ。共同などは47ニュースというニュースのサイトを作っているが、そこから派生して通信販売を始めたのだろう。その広告では「浅草今半」という料亭の食材を宣伝した。

 私は「への」が大嫌いで、これについて新聞やテレビを散々しつこいくらい批判してきた。共同通信も批判した。それなのに広告に大書するのだから、全く話しにならない。異常表現を大書したら、不愉快に思って買う人は減るはずだが、馬鹿なのでそうは思わない。開き直っているから、共同や地方紙の業績が悪化するのは当然だ。

・格助詞+「の」は珍しい
 「への」はなぜ異常なのか説明する。まず格助詞+「の」という語形は珍しい。「駅からの道」「法王との謁見」「電話での問い合わせ」などあるが、不安定な感じがする。臨時に使う表現だと思う。

 「への」も不安定で臨時的なはずだが、マス・メディアはそこら中で多用する。ちょっと読むと「グアムへの移転」「首相の資質への疑念」「就任への反対」などが見つかる。

 世界史の時間にシュリーマンの『古代への情熱』という書名を聞いて、不思議に思った人は多いだろう。本来「古代にかける情熱」とでも言うべきだ。

 哲学でニーチェを習って「権力への意志」と聞いて、不快に思った人もいるだろう。「権力を求める気持ち」とでも言うべきだ。

 後者はドイツ語の zu という前置詞の訳だ。英語の to に相当する。翻訳語だから不自然なのも当然だ。奇妙な言い方なのに、企業や役所も「への」を乱用する。

 また「役所に問い合わせる」が本来の言い方で、「役所へ問い合わせる」とは言いにくいのに、「役所への問い合わせ」と言う点でも「への」は駄目だ。「役所にの問い合わせ」とも言えないから、格助詞+「の」は特殊な構文であることが分かる。

・由来がない場合など
 「法王との謁見」「電話での問い合わせ」では「法王と謁見する」「電話で問い合わせる」という表現が下敷きにあって、それを名詞構文にしている。

 だが元の表現がないことがある。「事件に対する対応」とは言うが「事件へ対する対応」とは言わない。だがメディアは「事件への対応」と無理やり言う。

 マスコミが「への」を使うのは、そのように短くしたいからでもある。だが「の」でいいのに「への」と言って、わざわざ長くすることが増えてきた。以前は「容疑者宅の家宅捜索」と言っていたのに、最近は「容疑者宅への家宅捜索」と言うことが増えた。

・文構造を変える場合
 また長くした上に、文の構造を変えることがある。「音楽に造詣が深い」は固定した表現なのに「音楽への」と伸ばすこともある。「国会審議への影響なし」でなく、「国会審議に影響なし」だ。「他人への譲渡はできません」も駄目で「他人に譲渡はできません」だ。

 このような例では文の構造が変えてしまっている。本来「音楽に関して造詣が深い」の意味であり、「音楽に」は「深い」を修飾する。だが「音楽への造詣が深い」と言うと、「音楽」は「造詣」を修飾することになり、文構造が変わる。

 「対策を立てないことへの不満が高まっている」における「ことへの」も全く駄目だ。本来「立てないことに不満が高まっている」と言うから文構造もおかしくしている。

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