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ギリシャ語には受動態と能動態に加えて中動態があった [英語学]

【2011年07月18日】-昨日「受動態はpassive voiceの訳だ」と書いたが、能動態を英語ではactive voiceと言う。active(活動的な)とpassive(受動的な)が対応しているわけだ。文法用語を英語で知ると、理解が深まることがある。このレベルの英単語を覚えることにも役立つ。

 ところで言語学の本を読んでいると。middle voiceというのが出てくる。「中動態」と訳している。能動でも受動でもなく「中間の態」というわけだ。ギリシャ語やサンスクリット語にあったvoiceで、主に行為が自分自身に及ぶ場合に使った。つまり「私は鏡の中に私を見た」(つまり「自分を見た」)などと言いたい時に使った態だ。英語など現代語では、I looked at myself in the mirror. のように再帰代名詞を使っていう場合だ。

・受動態と融合
 ギリシャ語やサンスクリット語にあったと言っても全時制にあったのではなく、殆どの時制で受動態と同じ形だった。印欧祖語の段階では違う語形だったのだろうが、ギリシャ語などの段階では受動態と殆ど同じになったのだと思う。

 ラテン語では特有の語形は全くなく、全時制で受動態と同形だった。だからラテン文法では「中動態」と言わないが、受動態の語形で他動詞のように目的語を取るから不思議な感じがする。

 その後ギリシャ語では中動態の変化は段々消えて、現代ギリシャ語では受動態と全く同じ語形になった。ラテン語の子孫であるフランス語やスペイン語には、中動態の痕跡さえない。

 中動態は要らないから消えたのではないか。再帰代名詞を使えば言い表せることだから、中動態を保持する必要はない。印欧祖語やギリシャ語にあった希求法もなくなって、接続法(仮定法)に吸収された。

 英語の受動態も仮に必要がないのなら、消えていたはずだ。まだ残っているのは理由があるからに違いない。英語の授業では、能動態の文を機械的に書き換えさせるばかりでなく、どんな時に受動態を使うのか説明すべきだ。

・参考資料
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3309568.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Voice_(grammar)#Middle

高津春繁『印欧語比較言語文法』(岩波全書)
MacDonell, "A Sanskrit Grammar for Students"

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