ペルシャ語には冠詞がない! [他の言語]
【2012年10月30日】-先日公立図書館でペルシャ語の入門書を拾い読みしていたら、「冠詞がない」と書いてあったので、びっくりした。ロシア語には定冠詞も不定冠詞もないが、現代の印欧語で冠詞のない言語は珍しい。
インドヨーロッパ語族には元々冠詞はなかった。ラテン語には全くないし、Old English や古典ギリシャ語では定冠詞だけあった。段々冠詞を使うようになったのだ。
不定冠詞は元々数詞の1だ。英語のa, an はoneと同源だ。oneの弱形と考えてよい。anの方が古い形で、子音の前では-nが落ちてaと言うようになった。
フランス語では「1」も不定冠詞もun, une だし、ドイツ語では「1」はeinsで、不定冠詞はeinだ。
定冠詞は指示代名詞(「それ」など)に由来する。英語のtheも元々指示代名詞だった。
ドイツ語やフランス語で「私は学生です」などとと言う時、「学生」の前に不定冠詞をつけないが、略すのではなく、まだ不定冠詞が成立していなかった頃の名残なのだろう。
Ich bin Student.
Je suis etudiant.(フランス語のアクサンは入力が大変なので、省略)
英語では補語が一人だけの地位を表す語(Presidentなど)になっている場合、無冠詞にする。これも名残かも知れない。
・格変化もなし
冠詞は印欧語の特徴だからペルシャ語にないことにびっくりしたが、ペルシャ語では名詞などが格変化もしないとあったので、もっと驚いた。
印欧祖語では格変化は8格だった。(主格、属格、与格、対格、奪格、所格、具格、呼格)。ラテン語やロシア語では6格だ。
現代のヨーロッパ語で格変化が残っているのは、ロシア語やポーランド語などスラブ語派の言語が多い。英語や北欧語では所有を表す-sだけが残っていて、ロマンス語派では所有格もなくなった。
ちなにみ英語では-'sをつけるが、ドイツ語やスウェーデン語では-sだけつけるので見落としやすい。
またブルガリア語はスラブ語派に属するが、名詞の格変化は殆どなくなって、呼格だけ残っている。代名詞は英語のように格変化する。
格変化は古い特徴なので残っている言語に冠詞はないことが多いが、名詞や形容詞の格変化を失った言語では大抵冠詞があると思う。
ペルシャ語は名詞に格変化がないという点では新しいが、冠詞はない点では古い。新しい特徴と古い特徴を併せ持っている不思議な言語だ。
なおペルシャ語はアラビア文字で書くので、勉強しにくい。
・参考資料
http://en.wikipedia.org/wiki/Persian_grammar
http://en.wikipedia.org/wiki/Bulgarian_language
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