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小売店の間違い敬語 [*国語]

 以下の文章は、小売店に渡すために書きました。同じことに悩んでいる人は、これを印刷して配って結構です。
 

 日本語は今、ひどく乱れています。間違った言い方がすばらしいと思い込んで、しつこく言う人が、たくさんいます。日本人なのに、日本語ができないのです。
 この紙では、主に小売り店の言葉遣いを批判します。

・「千円からお預かりします」は、間違い
 まず、レジでお客から金を受け取る時に、「千円から頂きます」と言うのは、やめて下さい。数字に「から」を付けると、普通「以上」という意味を表します。「百人からの人が集まった」と言うと、「百人以上の人が集まった」という意味です。
 ところが、10年ほど前から国語力の低い人達は、「千円からお預かりします」などと言います。「から」を付けると、丁寧になると思い込んでいるようです。5千円や1万円など高額紙幣を受け取った時だけ、言う人もいます。「高額紙幣の時は言った方がいい」と、思っているのでしょう。
 「頂きます」もよくありません。本来は「お預かりします」と言うはずです。「客の渡した金を、自分の店の物にするのではなく、一時的に預かる」という、奥ゆかしい意味合いでしょう。まとめると、「千円、お預かりします」と言うべきです。なお、「千円を」ではありません。

・「~の方」は間違い
 小売り店では他にも、特殊な言葉を聞かされます。「~の方(ほう)」です。ファミリー・レストランなどでは、「メニューの方をお持ちしました」などと、異様なことを言われます。「~の方」を付けると、丁寧になると思い込んでいるようです。
 「方」はまず、方角を表します。「西の方へ行く」などという言い方です。それから、比較の対象を表します。「大阪より東京の方が、物価が高い」などという用法です。「メニューの方」などという表現は、あるはずがないのです。

 この商業敬語の由来はきっと、洋服店などで店員が客に服を勧める時に、「この方がお似合いですよ」などと言うことでしょう。「(お客さんにはそれは全く似合わなくて)、これがお似合いですよ」と言うより、「この方がお似合いですよ」と言った方が遠回しに聞こえるので、頭の悪い人達は、「~の方」を付けると、丁寧になると思い込んだのでしょう。「この方が似合う」は、「他の服と比べて」の意味合いです。比較の対象がないのなら、名詞に「方」は付けられません。

 「~の方」の乱用には、「ご理解の程をお願い致します」などの、「程」の影響があるのかも知れません。「ほど」と「ほう」は、音が似ているから、混同した可能性があります。いずれにしても、「方」を付けると丁寧になるというのは、根拠のない思い込みです。即座にやめて下さい。

・「こちら」も駄目
 最近の店員は、「こちら」も乱用します。「これ」の意味で言います。「こちら」は、「こっち」「ここ」「この人」などを丁寧に言う語であって、「これ」の丁寧表現ではありません。
 「こっちの方が、いい」を丁寧にして、「こちらの方が、いい」とは言えます。「ここに来て下さい」を丁寧にして、「こちらにおいで下さい」とも言えます。「この人が鈴木さんです」を丁寧にして、「こちらが鈴木さんです」とも、表現できます。

 ですが、「この服は、お買い得です」を丁寧にして、「こちらの服は、お買い得です」とは言えません。「こちら」は、「こっち」「ここ」「この人」などを丁寧に言う表現だからです。「この服は、お買い得です」としか言えません。
 「ここにある服」の意味でなら「こちらの服」と言えます。「(あれでなく)こっちの服」の意味でも、「こちらの服」と言えます。でも、「この服」の意味で「こちらの服」とは、本来言えないのです。
 ところが、小売店では「これ」「この」は使わずに、「こちら」「こちらの」とばかり言います。たとえ正しい使い方であっても、「こちら」を余りに多用したら、奇妙で不自然なのに、そうとも考えず、「こちら」を連発します。

 「こちら、申し込みを受け付けました」と言うのも、聞きます。「以上の申し込みを受け付けました」のつもりでしょうが、「こちら」に「以上」の意味はありません。おかしな言い回しです。

 また「この商品は、当店でお買い求めになったのですか」のつもりで、「この商品は、こちらでお買いになったのですか」と言う店員もいます。この文では「こちら」が自分の店を指しているから、自分に敬意を表することになり、滑稽です。言葉遣いを丁寧にすれば何でもいいと思って、自分にまで敬語を使うのは、度が過ぎています。

 「こちら」には、「こちらこそ、お世話になりました」のように、「自分」「当方」を表す用法もありますが、以前の日本人は考えなくても、しっかり区別していました。「こちらでお買い求めになったのですか」などと、無礼で尊大なことは言いませんでした。

 「こちら」を乱用している内に、勝手に意味を広げる者もいます。テレビでは「正解はこうです」と言うべき時に、「正解はこちらです」と言います。また「次の映像をご覧下さい」の意味で、「こちらをご覧下さい」と言うこともあります。「ここをご覧下さい」のつもりではないから、間違いです。
 あるラジオ局では、「このテーマについても、投書をお送り下さい」の意味で、「こちらもお送り下さい」と何回も言っていました。勝手放題で、めちゃくちゃな連中です。アナウンサーまで、日本語ができないのだから、実に深刻です。

 インターネットでは、「下に書いたショップで購入できます」の意味で、「こちらのショップで購入できます」と書いているサイトがあります。ここまで異常だと、考えないと意味が取れません。意味が通らなくても、客に媚びていればいいと思っているのだから、手が付けられません。

 更に、「こちら」に前述の「~の方」を付けて、「これ」の意味で「こちらの方(ほう)」とまで言う連中もいます。特殊敬語を二重に使っても不思議に思わないのだから、神経がどうかしています。
 「こちら」の誤用は余りに広まってしまったので、最近の辞書は「これ」の丁寧表現としても載せていますが、本来は間違いです。
 また、「そちら」「あちら」を、「それ」「あれ」の丁寧表現として使う人もいますが、当然駄目です。

・「なります」も間違い
 小売店では最近「なります」を、しつこいほど聞かされますが、殆どの場合、間違いです。「なる」は「赤くなる」や「早くなる」のように、主に変化を表す動詞です。それなのに、頭の悪い連中は変化を表さない文でも、「なります」と言います。小売店では、殆どの文を「なります」で終わらせるくらいに多用します。こんなに乱用しても、疑問を感じないのだから、どうかしています。

 まず「~です」の代わりに、「~になります」と言います。「そのパンは100円です」が本来の言い方なのに、わざわざ「100円になります」と言います。また、「明日は11時から営業します」でいいのに、「11時からの営業になります」と、張り紙などに書きます。
 どうも頭の悪い連中は「です」「します」を丁寧にしようとすると、「ございます」「いたします」と言えずに、「なります」と言ってしまうようです。「ございます」「いたします」は理解できるだろうけれど、自分では使えないのでしょう。
 人によっては、「こざいます」「いたします」と言えないことはないが、余りにかしこまった表現なので、口にしにくいのかも知れません。ですが、「なります」の連発は、極めて不愉快です。
 「なる」には、「先生はお話になります」のように、尊敬の用法があるし、「です」より遠回しな印象を与えるから、国語力の低い連中は乱用するのでしょう。

 店でどう「なります」と言われるか、時系列で考えてみましょう。代金を払う時、大抵2回は「なります」と言われます。レジに商品を持って行くと、店員が「~円になります」と言います。客が商品を幾つか買うので、「全部で~円になる」という意味でなら、こう言えますが、商品を一つしか買わない場合は、こうは言えません。でも、レジにいる人達は、商品を一つだけ買う場合でも、大抵「~円になります」と言います。「なります」を「です」の意味で使うのです。
 また店員は、客に釣り銭を渡す時にも、「なります」と言います。以前は「100円のお返しです」などと言っていたのに、今では大抵「100円のお返しになります」などと言います。
 「なる」には、「今度、引っ越しすることになった」のように、事態の重大な変化を表す用法がありますから、一々「100円のお釣りをお返しすることになりました」と言っているようで、滑稽です。

 食堂などで料理を運んで来た時に、「ピザになります」「ラーメンになります」などと言う変人もいます。「ピザでございます」などとも言えません。以前なら、「ピザ、お待たせしました」か、「ピザ、お待ちどお様です」と言ったはずです。「ピザ、お持ちしました」でも、いいでしょう。
 「ピザになります」は全く意味をなしません。「この材料は、10分後にピザになる」というつもりなら、そう言えるけれども、「ピザをお持ちしました」の意味では、断じてそう言い表せません。物を持ってきた時には、「お待ちどお様」などと言い添えるのが習わしなのに、そう言えなくなってしまったのは大問題です。

 鉄道会社の駅員はホームで、「発車になります」などと言います。「発車します」でいいのに、わざわざおかしなことを言います。漢語の動詞に「なる」を付けることはありますが、それは受け身を表す時です。「規則は変更されました」の意味で、「規則は変更になりました」などと言います。「電車が発車される」と言いたい訳ではないから、「発車になります」は誤りです。丁寧にしたければ、「発車いたします」と言うのです。中年の男でも、「いたします」が使えないのは、恥ずかしい話です。

 変人どもは、他にも勝手な表現を作り出しました。「です」「します」と置き換えても、意味をなさない場合です。
 店内に、「この商品は予約になります」と書いてあることがあります。「この商品は予約です」と言い換えても、意味をなしません。「この商品は、予約して頂く必要があります」とでも言うしかありません。「この商品は、お取り寄せになります」も、不思議な言い方です。「お取り寄せいたします」と言うべきです。
 通信販売の会社は、広告などに「5日後のお届けになります」などと書きますが、これも駄目です。「5日後にお届けします」か「お届けいたします」のはずです。

 「クレジット・カードでのお支払いになります」も、奇妙です。「クレジット・カードでのお支払いです」と言い直しても、意味が通りません。「クレジットカードでお支払い下さい」か、「クレジット・カードで支払う場合のみ、受け付けます」とでも書くべきです。
 「現金のみのお取扱いとなります」も、間違いです。「現金のみの取り扱いです」とも言えません。「現金でお支払い下さい」と言うしかありません。また、「お取り扱い」も駄目です。「取り扱う」のは会社だから、「お」をつけて、自らを敬っています。異常敬語を聞かせるくらい客に媚びるのに、自らに敬語を使って威張るのだから、とんでもない矛盾です。支離滅裂です。

 上で指摘した「こちら」と、この「なります」をつなげて、「こちら、~になります」という表現も定着しています。料理を持ってくる時に、「こちら、ピザになります」などと言う変人が大勢います。
 こんな人達は「こちら」を「これ」の意味で使い、「なります」を「です」の代わりに使っているから、「こちら、ピザになります」を言い直すと、「これはピザです」となります。ピザを持ってきて、「これはピザです」と言うのは、英会話の練習のようで、滑稽です。

 また、レシートを渡す時に、「こちらレシートになります」と言う者もいます。店員が客にレシートを渡す時、「これはレシートです」と言うこともできません。単に「レシートです」か、「レシート、お持ち下さい」と言うべきです。
 また「ここに捺印して下さい」「こちらにお座り下さい」の意味で、「こちらになります」と言った人もいます。更に「~の方」を加えて、「こちらの方になります」と言う、変わり者もいました。

 「こちら」と「なります」という間違いをつなげるのだから、二重に間違いです。頭がおかしくなっているので、丁寧そうな言葉を乱発していれば、客が喜ぶと思い込んでいるのでしょう。本当は間違いを撒き散らして、客を愚弄しているのです。馬鹿だから、人を敬おうとしながら、馬鹿にしているのです。

・終わりに
 間違い敬語を言う人は、客を不愉快にしようとしている訳ではないと思います。一生懸命考えて、言っているのでしょうが、考え方が浅はかだから、間違いをすばらしい言い回しだと思い込んで、しつこく押し付けるのでしょう。時々間違えるのは仕方がありませんが、毎日何度も言う表現が間違っているのは、深刻です。

 全く困ったことです。日本人なのに、日本語ができないのです。深刻な事態です。精神状態が異常だから、おかしな表現をすばらしいと思うのでしょう。

 日本人の神経が病んだ原因は、主にマスコミでしょう。日本の報道機関は共産主義に毒されて、「憲法を改正すると、戦争が起きる」という類の妄想を言い触らしてきたし、「結論づける」「アメリカによるイラクへの攻撃」「誰々は~の疑いが持たれている」などの異常表現で、嫌がらせをしてきたので、日本人は感覚がおかしくなってしまったのだと思います。

 今まで書いてきたような商業敬語を聞かされると、大抵の人は顔をしかめます。私はいつも呆れた顔をします。でも、店員は気づきません。客の顔を見ないで、言葉を発しているのです。客に媚びるようなことばかり言いながら、人の目も見ないのは、ひどい矛盾です。言葉遣いの問題だけではなく、考え方や生き方が根本から間違っているのです。

 間違い敬語は、若い女が使い始めたものが多いのですが、最近は中年の男も使います。若い女が使うのならまだ聞いていられますが、オヤジが使うと、特に不快で気持ち悪いと思います。
 そもそも言葉遣いは、そんなに丁寧でなくてもいいのです。心が大事です。客に感謝する心があれば、客はまた来るでしょう。客の顔を見ないで言うのだから、大して感謝していないはずです。間違い敬語は、一種の自己満足だと思います。

 間違い敬語を言われると、買う気がなくなります。小売店は売り上げが落ちると、余計に間違い敬語を使うようです。困ると間違いを増やすのだから、話しになりません。このように浅はかで自己中心的だから、消費不況はひどくなって、店は潰れるのでしょう。悪循環にまったく気づいていないようで、呆れます。

 私は店で、なるべく買い物をしません。飲食店にも、あまり入りません。異常敬語を聞かされるのが、嫌だからです。物は、なるべく通信販売で買います。インターネットにも問題表現はありますが、文字で見るだけなら、直接言われるより、ましです。

 また私は時々店で注意しますが、そうすると店員は萎縮して、声を小さくしてしまいます。これでは余計、売れなくなります。考え方が根本から間違っているから、常に悪い方向に向かいます。

 人間は言葉で考え、言葉で感じます。だから、言葉遣いが間違っていると、正しく考えることや、人間らしく感じることができなくなるでしょう。本来ない言い方を乱用していると、思考や感情が歪んでしまうと思います。

 日本語は、日本人全員が使うものであり、勝手に変えて、乱すことは、許されません。国語は、今の日本人が祖先から受け継ぎ、子孫に伝えて行かなくてはならない、財産なのです。


タグ:言葉遣い
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NHK の語学講座は、テレビよりラジオの方が勉強に向いている [英語教育]

 【ツカサネット新聞4月1日】-いま本屋に行くと、NHK の語学講座のテキストが山積みになっている。4月から語学の勉強を始める人が多いので、毎年3月末はたくさん置く。だがテキストは段々減って、翌年の2月末には半分以下になってしまう。

 NHK の語学講座は、テレビとラジオで放送している。ラジオなど野暮ったいと思って、「テレビで英会話でも始めようか」と思う人が多いだろう。

 だが、中学1年の時の基礎英語以来、20年くらい語学講座を聞いてきた経験から言うと、ラジオの方がずっと語学学習に適している。

 テレビは音と映像を両方出すから、一般的には分かりやすいが、語学の勉強には向いていない。画面もテキストも見なくてはならないので、忙して困る。ラジオではテキストだけ見ればいいので、勉強に集中できる。

 またラジオは放送回数が多いが、テレビでは週に1回しか放送しないので、勉強時間が少なくなってしまう。このような理由で、ラジオの方が語学に向いているのだ。

 4月から放送する英語の講座は、テレビでは5講座あって、『英語が伝わる!100のツボ』『テレビで留学!』『3か月トピック英会話』『アンコール新3か月トピック英会話』『リトル・チャロ カラダにしみこむ英会話』だ。

 ラジオでは9講座もあって、『基礎英語1』『基礎英語2』『基礎英語3』『ラジオ英会話』『入門ビジネス英語』『実践ビジネス英語』『英語ものしり倶楽部』『徹底トレーニング英会話』『チャロの英語実力講座』だ。多すぎて、よくない。

 テレビは週に1回20分が基本のようだが、ラジオでは週5回15分の放送をする。1週間に20分だけの勉強では、英語は上達しない。

 英語から遠ざかっていたが、一から勉強し直したい人には、ラジオで『基礎英語』の1と2を同時に聞くようお勧めする。中学1年や2年の英語は簡単だから、聞く必要がないと思う人が多いが、その程度の英語でもスラスラとは言えないだろう。基礎を疎かにしていては、何事も上達しない。実際の会話はこの程度の簡単な英語が多いはずだ。両講座でじっくり勉強すれば、英語力はぐっと伸びるに違いない。 

 英語から10年も離れていた人が、英会話の講座を取るのは無謀に近い。殆ど身につかないだろう。単語や文法が頭に入っていないと、会話を習っても上達しない。大人になってから英語をやり直す人は、基本を疎かにして会話に入るから、上達せずに投げ出してしまうのだろう。基礎を馬鹿にせず、ぜひ一からやり直して頂きたい。

 NHK は、他の外国語講座も放送している。ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、アラビア語、中国語、朝鮮語の9ヶ国語だ。テレビはやはり週に1回だが、ラジオでは4月から英語と同じく土曜の放送をやめ、時間を20分から15分に短縮した。原則として週3回が入門編で、2回は応用編だ。ロシア語は難しいからか、週5回入門編にしたので、じっくり勉強できるだろう。ロシア語に挑戦したいと思っていた人に、今回はいい機会だ。

 だが、テキストが380円もするのには驚いた。20年前は160円だったと思う。聞く人が少ないから、テキストを値上げし、それによって更に視聴者を減らしたのだろう。NHK は悪循環にはまっている。表面上は楽しくても、身につく番組を作っていないから、視聴者が減るに違いない。NHK は反省すべきだ。聞く側も、しっかり暗記しないと上達しないことを、銘記すべきだ。

 私も久しぶりに、語学講座を聞いてみようかという気になっている。

 ツカサネット新聞のサイトで読むのなら、http://www.222.co.jp/netnews/article.aspx?asn=13149 で。


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