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マスコミが攻撃するから、「病院たらい回し」が増える [医療]

【2009年05月07日】-今回は、いわゆる医療崩壊、「病院のたらい回し」について考えてみたい。

 急病人が救急車を呼んだが、受け入れてくれる病院がなくて亡くなることが、2年くらい前から何度も起き、マス・メディアは大きく扱って。起きたばかりのことだけでなく、数ヶ月前のそんな事例を掘り返したこともある。

 メディアはこのような出来事を報じる時、「医者がサボるから、助かるはずの人が死んでしまった」という調子で取り上げる。特に妊婦がたらい回しのために流産してしまった場合は、強い調子で病院を非難する。だが決して医者がサボっている訳ではない。様々な事情があるが、マスコミはそれを言わないのだ。

・患者の問題
 まず大した病気でないのに、救急車を呼んで病院に入る人がかなりいるらしい。こんな人が多ければ救急部門は混んでしまい、肝心な患者を診られなくなる。

 急病人でなくても、大病院に入院したがる人もいる。中小の病院で十分なのに、大病院の方が安心できるからだ。

 また医療費を削減するため、厚生労働省はいわゆる社会的入院を減らそうとしている。そのため病院のベッド数が減っている。このような理由で、ベッドが不足している。病院は急患を受け入れたくても、受け入れられないのだ。

 妊婦の場合は特別だ。普通、掛かりつけの医師を決めていて、分娩の予約を取るらしい。それをしていない「飛び込み出産」は医者が嫌う。胎児の様子が事前に分からないし、そんな妊婦は出産費用を払わないとか、赤ちゃんを置き去りにするとか、他の問題も起こすらしい。だから、ただでさえ忙しい産婦人科医は、そんな妊婦の受け入れは断るそうだ。

・医学生の問題
 医者が足りないことも、たらい回しの原因だ。医学部の学生は外科や産婦人科など厳しい科目を避ける傾向があり、田舎の病院に行きたがらないそうだ。

 また臨床医より研究医の方が楽なので、研究医を選ぶ学生もいる。以上のような理由で、妊婦や急患を診る医者が足りなくなってしまう。

・訴訟と抗議
 医療ミスに世間の目が厳しくなったことも、医者のやる気をそいでいる。手術が失敗して患者が亡くなった場合、遺族が裁判を起こすことが増えた。手術前「成功するとは限らない」と説明を受けるはずだが、失敗したのは医者のせいだと思い込んで、遺族が民事訴訟を起こすのだ。

 遺族が訴え出ると、マスコミは訴訟が適切かどうかは全く考えず、「医者が悪い」と決めつけた報道をする。医者は精一杯やったのに、患者とマスコミに追及されて、嫌気が差してしまう。

 また、気に入らないことがあると学校に怒鳴り込んでくるモンスター・ペアレントのように、思い通りの治療が受けられなかったと抗議するモンスター・ペイシャント(患者)もいるそうだ。他の患者の前で大声を上げてまくし立てるので、医者は参ってしまうそうだ。

 手術が失敗して患者が死亡した時、警察が医療ミスと判断して、捜査を始めることもある。そうなると、メディアはまた捜査の妥当性は考えずに医者を追及する。左翼は単細胞だから、不正を追及するのはいいことだと思い込んで、医者を攻撃する。

・疲れた勤務医は開業
 このように大病院で働く医者はあちこちから追い詰められて、気力を失い、退職する。勤務医を辞めたあとは、開業する。開業医は夜勤がないから体は楽だし、収入も増える。医者不足と言うが、勤務医が足りないだけだ。医師不足は、余りに不正確な言い方だ。

 そうすると、病院では医者が足りなくなり、また救急車のたらい回しや医療ミスが起きる。そうなると医師は疲れて果てて、また退職する。こんな悪循環が起きているようなのだ。

 それなのにマスコミは病院を責め立てる。そうすれば、また人が死ぬ。マス・メディアは間接的に人を殺している。病院の状況を知らない訳ではないはずだ。自分達の攻撃のために医者が退職したと聞くだろう。また2006年5月には小松秀樹著『医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か』が出て、以上のようなことを書いたのだ。それでも医者を糾弾するのは、日本人を殺したいからだと思う。

 十数年前、中学生がカッター・ナイフで友達を傷つける事件が続いたことがあった。読売や産経を除く大手メディアは、人命より人権の方が大事だという詭弁を弄して、荷物検査に反対した。その結果、事件は起き続けた。マスコミは建前偽善を吹聴して、間接的に人を殺している。「共産主義のよさが分からない人間は日本にいらない」と思っているのだろう。

参考文献:
森田豊『産科医が消える前に 現役医師が描く危機回避のシナリオ』(2008年4月22日発行)
http://www.japantoday.com/category/commentary/view/hospitals-in-crisis
http://www.j-cast.com/2007/08/31010860.html

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