報道とリーク(中)~リークが冤罪を生む [*マスコミ]
【2010年01月26日】-捜査機関が記者に情報を漏らす場合、内容が正しければいいが、間違っていると問題を生み出す。
まず冤罪を生み出してしまうことがある。
10年くらい前、冤罪を扱ったテレビで次のような場面を見た。容疑者がどうしても自白しないので、刑事が新聞記事を見せた。そこには「容疑者が犯人だ」と書いてあった。刑事はそれを見せながら、「新聞にもこう書いてある。お前がやったのだ。」と容疑者に自白を迫った。容疑者は犯人ではないのに、犯行を認めてしまった。
刑事は容疑者を犯人と思い込んで、記者にそう話した。記者はそれを鵜呑みにして、記事にした。だから、こんなことが起きた訳だ。
冤罪については批判が多いが、無理な取り調べは大きく減っていると思う。上に書いたことも30年くらい前のことだ。何十年も前の警察と今の警察をごっちゃにしてはいけない。
また警察は都道府県ごとの組織だから、地域差があるはずだ。年代と地域を考慮しないのも、「ないまぜ報道」だ。
最近は容疑者に配慮するようになって、千葉大の荻野友花里さんを殺したと自供した竪山辰美被告人の顔と名を、すぐには公表しなかった。
また東京と鳥取の詐欺女の名と顔も、テレビは出さない。千葉県警と鳥取県警が許可しないのだそうだ。(荻野さんの事件も千葉県警が担当しており、忙しい。)
・警察が誤報の責任を取らない
リークだと間違えた時に、警察が責任を取らない問題もある。松本サリン事件では当初、河野義行さんが犯人だと疑われ、メディアは「凶悪なことをしたのに、自白せず卑怯だ」といった調子で2週間ほど非難し続けた。
だが地下鉄サリン事件が起きて、真犯人はオウム真理教だと分かり、河野さんに対する疑いは晴れた。警察は河野さんを被疑者として取り調べたが、公式に発表した訳ではないので、罪を認めなかった。
テレビ朝日の『スクープ』という番組では、鳥越俊太郎氏が長野県警にまで出向いて、河野さんに嫌疑をかけたことを追及した。同県警はカメラを庁舎内に入れることも拒否し、「マスコミが勝手に言ったこと」と責任をメディアに転嫁した。
マス・メディアはリークという不正な手段で情報を得ているから、間違えた時には責任を押し付けられてしまう。リークはなるべく減らして公式に発表すれば、こういう問題は少なくなるはずだ。
報道とリーク(上)~リークはあるのか、ないのか [*マスコミ]
【2010年01月25日】-先週、石川知裕容疑者が検事に話したことが何度もニュースに出たので、検察がメディアにリークをしていると批判が巻き起こった。
民主党が不利なリーク報道をやめて欲しいのは分かるが、自民党の河野太郎議員も批判した。検察も警察もいつもこのようなリークをして、メディアはそれを報じているのに、今回だけ批判が出た。
自民党は政権を取っている間、リーク報道の被害を受けたはずだが、公式に抗議したことはないと思う。民主党は保身の気持ちが強いようだ。
・リークはある
元検事の落合洋司弁護士は1月21日のブログで、検事が世論誘導のためにリークすることを認めた。「東京地検でメディアに対応できるのは副部長以上だが、記者は平検事にも接触を試みる。幹部も平検事も、世論を有利に誘導するため情報を漏らすことがある。一方、特捜部の捜査方針に批判的な高検などの検事が、偽情報をわざと流すこともある。」と書いた。
一方、東京地検特捜部長だった熊崎勝彦弁護士は、同じく21日フジテレビの『とくダネ!』に出演して、リークをきっぱり否定した。J-CAST によると「検事が自分から喋って情報操作をして、世論を盛り上げるなんてことはあり得ない。捜査は証拠と疑いに基づいて、淡々とやらざるを得ない。それしかない。」と語った。以前の勤め先に代わって、公式見解を代弁したのだろう。
・本当のことを言って首
リークについては面白いというか馬鹿げたことが起きた。NHK の『手話ニュース』は16日、「小沢の秘書だった石川知裕が、容疑を認めた」と伝えた。これを見た視聴者が NHK に電話して「検察のリークがあるのか」と尋ねたら、NHK の職員は「あり得る」と認めた。そのため上層部はこの職員を業務から外し、上司を処分したというのだ。
NHK は「担当者がリークの意味を正確に理解しないまま、思い込み回答した」と言い訳をした、嘘をついてきたが、それを認めてしまったので、別の嘘をついて初めの嘘をつき続けようというのだ。本当のことを言って、首になったのだから気の毒だ。組織はこういうものだが、これでいい訳ではない。
捜査機関は間違いなくリークをしていて、NHK も散々リークによってニュースを流してきたのに、公式には認めず解雇と処分をした。NHK に報道の自由を主張する資格はない。
・資料
リークについて : http://www.j-cast.com/2010/01/22058559.html
http://www.j-cast.com/tv/2010/01/21058382.html
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100121
NHK について : http://www.asahi.com/national/update/0125/TKY201001250353.html
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100126ddm041040057000c.html