オランダ語は英語とドイツ語の中間 [英語学]
【2010年06月19日に掲載、20日に掲載】-今晩、日本のサッカーチームはオランダと対戦しているし、月曜日のエントリーでオランダ語にも触れたので、今日はオランダ語を取り上げる。
オランダ語は、英語とドイツ語を勉強した者には取っつきやすい言葉だ。英語とドイツ語の中間のような言語だからだ。外国語は20くらい勉強したが、オランダ語のように楽をした言語は他にない。1ヶ月で入門書をざっと終えることができた。(1ヶ月しか勉強していない。もう殆ど覚えていない。)
オランダ語が英語とドイツ語の間に位置するのは、単語を並べてみると一目瞭然だ。
英語 オランダ語 ドイツ語
book boek(ブック) Buch(ブーフ)
name naam (ナーム) Namen(ナーメン)
good goed(グッド) gut(グート)
文でも、オランダ語は英語とドイツ語の中間にある。
英語 I read this book.(私はこの本を読む。)
蘭語 Ik lees dit boek. (イク レース ディット ブック)
独語 Ich lese dieses Buch. (イヒ レーゼ ディーゼス ブーフ)
3ヶ国語が、いつもこんなに似ている訳ではない。説明に都合がいいように選んだ。
綴りだけでは読み方が分からなくてちゃんと比較できないから、不正確だが片仮名で読み方を書いた。(発音記号は同じ記号でも言語によって表す音が少し違うので、新しい言葉を始める時には気をつけた方がいい。)
・歴史
3ヶ国語が似ているのは、どれもゲルマン語派の西ゲルマン語群に属すからだ。大本が同じだから、似ていて当然だ。
北ドイツに住んでいたアングル人とサクソン人が4世紀中頃からブリテン島に渡り始めたので、英語は大陸のゲルマン語とは違う展開を示すことになった。
オランダ語はドイツの北部方言とそっくりだ。だから英語はオランダ語と共通点が多い。よく「英語とドイツ語は似ている」と言うが、オランダ語にはもっと似ている。
オランダ語の文法の基本はドイツ語と同じだ。名詞には文法上の性がある。分離動詞があって、前綴りは文末に置く。従属節では、動詞は節の終わりに来る。
動詞の位置は、オランダ語とドイツ語の特徴だと思う。他の印欧語には多分ない。英語は英仏海峡に隔てられて、大陸の西ゲルマン語の影響は受けなかったのだろう。
・方言
オランダ語はドイツ語の方言と言ってもいいくらいだ。ドイツ語の方言地図を見ると、オランダ語まで載っているものがある。(たとえば『木村相良 独和辞典』の見返しの地図。)
両語は国境線で突然変わるのではなく、政治的な区分とは関係なく北から南に行くに従って少しずつ変化する。ドイツ北部の方言は標準ドイツ語よりオランダ語に近い。
(ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語も国境で突然変わるのではなく、徐々に変化するようだ。ロシア語などスラブ語派でも同じかも知れない。)
「オランダ語はドイツ語の方言と言ってもいい」と書いたが、これはドイツ語を基準にした場合の言い方で、本質的にはオランダ語とドイツ語は対等だ。
ドイツ語が上位にある訳ではない。ドイツ語の方が有名で使用者が多いが、オランダ語は子音推移を経ていないので昔の姿を留めている。
ドイツ語を勉強している人はオランダ語もやるといい。取っつきやすいし、視野が広がる。
早大の独文科にいた森田貞雄名誉教授は、アイスランド語が本当の専攻だったので、同科にはアイスランド語も研究している教員がいるが、オランダ語の方がドイツ語の理解を深めると思う。大学教師がちゃんと研究をしていない一例だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/V2%E8%AA%9E%E9%A0%86
http://en.wikipedia.org/wiki/Dutch_language