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「即戦力」と歪曲する毎日新聞の意図は何か [*経済]

【2011年01月06日に掲載、12日に訂正】-数年前からマスコミはしばしば「企業が即戦力を求めている」と言う。企業は、採用したらすぐ戦力になって、会社に貢献する人材を求めているというのだ。

 だが「即戦力」という言葉を聞くたびに、何か胡散臭いものを感じた。まず言葉の響きが軽薄だ。また、入社してすぐしっかり仕事のできる学生などいないはずだ。初めて会社員になるのだから、何年も働いている人と同じにはできない。

 それに、どこの会社にも独自の流儀があるはずだから、それを身につけなければ働けないはずだ。

 本屋で小泉信三著『読書論』(岩波新書)を立ち読みしたら、疑問が氷解した。「即戦力もすぐ役に立つ本も駄目だ。」と書いてあった。「すぐ役に立つ人材はすぐ役に立たなくなる。本も同じだ。すぐには役立たない本が、人間の精神を飛躍させる。」などと論じていたのだ。

 即戦力を求める風潮は間違っている訳だ。だからメディアは企業が「即戦力が欲しい」と言ったら、批判すべきだ。だが実際には批判するどころか、自ら「即戦力」と言い触らす。これも日本潰しの陰謀に違いない。

・企業が求めるのは、即戦力でなく研修費の自己負担
 毎日新聞は1月6日付夕刊に、「新卒採用アンケート:企業、求む即戦力 論理的思考力、解決力を重視--同友会」と題する記事を載せた。経済同友会は昨秋、企業が採用の際にどのような能力を重視するかアンケートを行ったが、それを紹介する記事だ。

 記事の趣旨は、意欲を重視する企業が以前より減り、思考力や説明能力を重視する企業が増えたということだ。だが初めと終わりに、「即戦力を求める企業が多くなった」とも書いた。

 経済同友会のウェブ・サイトでこのアンケート結果をざっと読んだところ、「即戦力」という言葉は使っていないようだ。「研修費用の一部を社員に負担してもらう企業が増えそうだ」とは書いてある。

 毎日はそれを捉えて、「即戦力を求める企業が増えた」とねじ曲げたようだ。篠原成行記者は、末尾に次のように書いた

<アンケートでは、「研修費用の一部個人(本人)負担」について、実施済み企業が12.2%で今後行いたいとする企業を含めると23.9%に達した。経済同友会は「不況で研修費を削らざるを得ず、研修が最低限ですむ即戦力を求める傾向が強くなった」と分析している。>

 不況のため企業が「研修費を削らざるを得ない」のは事実だが、即戦力を求めている訳ではない。新入社員に研修費を一部負担して欲しいだけだ。

 アンケートとは関係がないのに、企業は11月大学側に「即戦力となる人材を育てて欲しい」と要望したとも書いた。何としても「企業は即戦力を欲しがっている」と言い触らしたいようだ。強い悪意を感じる。

・見出しも
 研修費は記事の中心ではないし、「即戦力」はねじ曲げの結果だから、見出しに入れる必要はない。それなのに企業が求めることの第1に上げたのだから、見出しをつけた整理部員も悪質だ。

 他のメディアが「企業は即戦力を欲しがっている」と言う時も、根拠はなくてねじ曲げなのだろう。

 デマ・マスコミは、学生を不安にしたいのだろう。また企業幹部の気を短くして、長期的な視野を失わせたいのだろう。

 これだけ景気が悪くて苦しんでいる人が多いのに、まだ日本を混乱させたいのだから悪質だ。

 J-CAST が12月9日付で載せた「『3ヶ国語ペラペラ』留学生 グローバル時代の即戦力となるか」も、不愉快な文章だ。言葉ができてもそれだけでは仕事はできない。

 「ペラペラ」も軽薄な言い方だ。母国語でも言いよどむことがあるのだから、外国語ではペラペラ話せない。
 

・リンク
http://mainichi.jp/life/today/news/20110106dde001100006000c.html
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/101222a.html
http://www.j-cast.com/kaisha/2010/12/09083039.html?p=all

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