疑問副詞はどっちの動詞を修飾するか [英語学]
【2012年07月14日】-生成文法の問題点ばかりあげつらっていると不公平だし発展性がないので、今回はいいところを挙げることにする。
ShlonskyとSoareは2011年に、Remarks and Replies, Where’s ‘Why’?という論文を書いた。「見解と返答-Why はどこにあるか」といった意味だ。生成文法に基づいて、whyについて考察している。
イタリア語やルーマニア語も出て来て難解だが、whyを複文で使うと二通りの解釈ができると述べている点はすぐに理解できる。
Why did you say that John left?
例えばこの文は次の二通りの解釈が成り立つ。
1.「あなたはなぜ、ジョンが立ち去ったと言ったのですか」
2.「あなたは、ジョンがなぜ立ち去ったと、言ったのですか」
1の解釈では「あなたがそう言った理由」を訊いているが、2の解釈では「ジョンが立ち去った理由」を訊いている訳だ。
英文解釈について散々考えたが、このようなことには気がついたことがなかった。生成文法の論文は、ある言語現象(表現)がどうして生まれたのか、専門用語を使ってくどくどと論じることが多いが、このように解釈を教えてくれることもある。
Elizabeth Cowperが1992年に書いたA Concise Introduction to Syntactic Theory: The Government-Binding Approachを読んでいたら、182ページに似たような例文が出て来た。
When did he say he would arrive?
1.「彼は到着すると、いつ言ったのですか」
2.「彼はいつ到着すると、言ったのですか」
1ではwhenがsayを修飾していると取り、2ではarriveを修飾していると解釈している。
生成文法ではこのような構文を考える場合、「疑問副詞がどの動詞を修飾するか」という考え方はしない。かみ砕いて言うと、「元々どっちの動詞の隣にあって、文頭に移動したのか」と考える。
正確ではあるが、厄介だ。
・リンク
http://www.mitpressjournals.org/doi/pdf/10.1162/LING_a_00064