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オースティンの『高慢と偏見』にhad much better~とあった [英語学]

【2012年08月12日、14日に訂正】-数日前から、Jane Austenの書いたPride and Prejudiceを読んでいる。日本では『高慢と偏見』と訳しているが、恋愛小説だからこの題が与えるイメージとはかなり違う。楽しい内容だ。オースティンが1813年に発表した作品だ。

 第3章にYou had much better dance.と出て来たので、驚いた。パーティーの場面で資産家のビングリー(男)が、友達のダーシー(男)に向かって「立っていないで、ぜひ踊りなよ」と勧めた時の台詞だ。

 20世紀の英語ではhad better は「~してもよい」という熟語に成り切っているので、間にmuchを挟むことはない。だがここではmuchがbetterを修飾している。

 7章にはI had much rather go in the coach.ともある。「ぜひ馬車で行きたい」という意味だ。「~したい」はwould ratherの方が多いが、had ratherとも言う。

 rather(むしろ)を比較級と思っている人は少ないが、元々rathe という副詞の比較級だ。比較級だからmuchが修飾している。

 had betterでもhad ratherでもhadは接続法の過去だ。直説法の過去と同形だが、10世紀頃までは語形が違った。

 subjunctive moodは「仮定法」と訳すことが多いが、この法は仮定ばかり表す訳ではないし、subjunctiveは「接続詞のあとで使う」の意だから「接続法」と訳した方がいい。独文法でもラテン文法でも「接続法」と言う。「仮定法」と訳すと、婉曲を表す場合でも仮定に結び付けてしまうので、その点でもよくない。

 またhad betterにおいてhadは元来「見なす」という意味らしい。たとえばI had better go.なら「私は行くことをbetterと見なす」という意味だ。

 Curmeの文法書(1931)を見たら「had best, had as good とも言う」と書いてあった。had bestは今でも時々見る。had as good~は「~は同じくらいいいと思う」ということだ。

 Pride and Prejudiceは19世紀初めの小説だが、historical syntax(歴史的統語論)に面白い材料を提供してくれる。

・参考資料
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%85%A2%E3%81%A8%E5%81%8F%E8%A6%8B

Curme, George.(1931)A Grammar of the English Language Volume2 Syntax
 

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