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漫画首相の悲しい末路 [政局]

【2009年06月25日】-私は麻生太郎に、ある程度期待していた。いわゆる「小泉改革」が進んでいた頃、「地方経済はひどくなっている。何とかしないといけない。」と言っていたからだ。郵政民営化についても、よくないという趣旨のことを話していた。

 「改革」の偽善性に気づいているから、総理大臣になったら偽の改革を取り消し、景気対策もやってくれるだろうと、少し期待していた。漫画が好きなのは知っていたが、本も読むと思っていた。

 だが蓋を開けてみたら、とんでもなかった。本も新聞も読まないし、漢字を誤読する。外交が得意だと自負しているが、成果は上がらない。

 もっとも左翼マスコミは批判ばかりして、いいところは言わないようにしているので、公平に評価するのは難しい。

・経済政策は効果なし
 麻生政権は補正予算を3回も組んで、景気対策には取り組んできた。だが景気はよくなっていない。百貨店の5月の売り上げ高は前年に比べて 12.3% も減った。政府は6月17日「景気が底を打った」と宣言したが、よくなったと実感している日本人は殆どいないはずだ。

 補正予算の内容も、どうかしている。5月29日に成立した補正予算では、14兆円のうち5兆円が農水省関連の財団法人などの基金だ。「アニメの殿堂」の予算も入れた。政権を失いかねない所まで追い込まれているのに、役人の言いなりなのだ。

 麻生は「消費税を上げたい」と何度も言う。増税を喜ぶ人はいないから、選挙の前には言わない方がいい。予告せずに突然増税するのは民主国家の手続きに反するが、選挙を考えないのはどうかしている。そもそも予算の無駄遣いを減らすべきで、それをしないで増税するのは間違っている。

 麻生が消費税の増税をしつこく言うのは、財務省に強制されているからという説がある。『サピオ』は2月11日・18日号の105ページに、「財務省は『増税に賛成しないと、麻生政権に協力しない』と圧力をかけている」などと書いた。官僚の望む通りに政治が進むのなら、何のために政治家がいるのか分からない。

 景気が悪いのも、自民不支持の要因だろう。アメリカの連邦選挙では、景気がいい時は与党が有利で、悪い時は野党に有利だと言われている。不況が長引き、悪化しているから、民主党に期待を寄せる人が増えるのだと思う。

・世襲制限と高速値下げでは選挙に勝てない
 2年くらい前から「次の解散総選挙はいつだ」と言われてきたが、任期満了は9月なので、いよいよだ。

 自民党は選挙目当ての政策を次々に発表しているが、有権者が評価するようなことは殆どない。高速道路の料金を千円にしたのは評判がいいが、これだけで自民党に投票する人はまずいない。

 世襲議員の禁止も掲げている。選挙前にはその候補者を推薦しなくても、選挙が終わってから受け入れるようだから、全く無意味だ。

 閣僚や国会議員の夏のボーナスを2割カットしたし、国会議員の人数を減らすことを選挙公約に入れることにした。だが、この程度のことで支持率は挽回しない。

 国会の二院制を見直すことも公約に入れる予定だが、憲法改正が必要だ。おいそれとできることではない。二院制には無駄もあるが、悪法の成立を阻止することもある。「こんなことでも公約に入れておけば、投票する人が増えるだろう」という、見え透いた選挙対策だ。マスコミはこういうことこそ批判すべきだが、殆どしない。

 麻生首相は1ヶ月くらい前、厚生労働省の分割を言い出した。元々は読売新聞の渡辺恒雄会長が提案したことを、麻生が取り入れたそうだ。

 厚生労働省は組織が大きすぎるし、厚生と労働はだいぶ違うことだ。分割してもいいが、「社会保障省」と「国民生活省」という名称は分かりにくいし、国民に迎合する気持ちが露骨に表れている。こんなことで自民党を見直す人がいるとは思えない。

 国民が望んでいることは、公務員改革だ。無駄な公共事業をやめる。天下り、特に「渡り」をなくす。いらない特殊法人を潰す。そうやって無駄遣いをなくして、所得税を下げ、景気をよくする。多くの国民が望んでいることは、このようなことのはずだ。

 それなのに、自民党はどうして国民の気持ちがくみ取れないのか。民主党は分かっている。公務員改革は大変だから、逃げているのだ。逃げているから、支持率は落ちるのだ。必死になってやるしかない。

・菅義偉のせいで、自民党は右往左往
 世襲禁止は、選挙対策副委員長の菅義偉(すが・よしひで)が特に主張している。マニフェスト・プロジェクト・チームの座長でもある。「世襲を禁止しないと選挙で負ける」と強い意気込みで主張している。記者会見ではっきり言ったら、知っている人は多いだろう。

 『週刊新潮』(6月25日号)によると、菅は麻生の側近で、麻生にたびたび進言している。

 元々麻生は就任直後、衆議院を解散して選挙に臨むつもりだった。『月刊文藝春秋』にそう書いたくらいだ。だが、支持率はあまり高くないので、解散を先送りした。首相にそう勧めたのは、菅だというのだ。日刊ゲンダイもそう書いた。

 鳩山邦夫の解任を麻生に進言したのも菅で、日経もそう書いた。「鳩山を斬っても、支持率は大して落ちない。西川を辞めさせると、財界が選挙に協力してくれない」と麻生を説得したそうだ。ところが目論見は大きく外れて、内閣支持率は落ちた。

 去年の10月、衆院を解散しておけば、自民党はこんなに追い詰められずに済んだのだ。菅の責任は大きい。

 「世襲議員は庶民の気持ちが分からない」などと言われているが、菅は世襲でも金持ちでもない。働きながら、夜間大学に通った叩き上げだ。それでも一般国民の気持ちが全く分かっていないのだ。

 世襲に問題もあるが、分かりやすいから左翼マスコミが必要以上に喧伝し、政治家がそれに左右されていると思う。マスコミは以前タレント議員も批判した。分かりやすいけれど、本質的でない批判が多いのだ。

・麻生降ろし
 支持率は低いままだし向上する見込みもないので、自民党では2週間くらい前から、いわゆる「麻生降ろし」が起きている。

 自民党の総裁は9月で任期が切れるので、それを前倒しする形で新しい総裁を選び、次の衆院選挙に臨む計画だ。元々麻生は人気が高いから、首相にして衆院選を戦うつもりだったから、これでは何のために麻生を総理にしたのか分からない。

 10年くらい前までは、内閣支持率が急落すると、もっと素早く首相を辞めさせたものだが、安倍政権の末期も時間がかかった。政治評論家の浅川博忠氏は、「派閥の力が衰えて、麻生を引きずり降ろすこともできない」と言う。(ゲンダイ2009年6月4日付)これも、左翼マスコミがしつこく派閥政治を批判したからだ。安っぽい正義感で追究するから、問題を起こす。

 7月5日には静岡知事選、12日には都議会選があるので、麻生首相は応援に力を入れている。自民推薦の候補者が落選すると、政権基盤が弱まるからだ。「都議選で自民が負けたら、麻生は辞任するつもりで、その場合は8月に総裁選挙をする」という見方もある。

 自民党は、西松建設からの献金や郵便割引不正事件で民主党の人気が落ちないかと、期待しているそうだ。敵失を待っているようでは話にならない。この政党は本当に制度疲労を起こしている。

・鳩山邦夫や東国原英夫の動向
 鳩山邦夫は離党をほのめかしていたのに、今週になってからは「総裁選に出ようか」などと言っている。総裁にはなれないと思うが、もしなったら兄と政権を争うことになる。

 おととい23日からは、自民党が大阪府の橋下知事、宮崎県の東国原知事に衆院選に出馬しないか打診し、東国原が「自民党の総裁選挙に出してくれて、全国知事会のマニフェストを党の公約に入れるなら、出馬する」などと言ったので、テレビはこれを中心にやっている。

 「注目を集めるための作戦か」「自民党はそこまで落ちぶれたか」「東国原は舞い上がっていないか」「両知事を民主党に行かせないための作戦だ」など意見や憶測がたくさん出ている。実に賑やかだが、動向ばかりで、政策には一切触れない。不毛だ。(テレビは騒いで、視聴率が上がればいい。)

 東国原知事は「統治システムを変えないと、地方は再生しない。地方分権を進めるために総理になりたい。」と言うが、大臣でも分権を推し進められるはずだ。また国内問題は分かっても、外交は大丈夫なのか。元々政治家になりたくて、早大で学んでいたが、まだ首相は無理だと思う。宮崎でやりかけのこともあるはずだ。

 与謝野大臣や渡辺喜美が、先物取引の会社から個人献金を装った企業献金を受けていたことが発覚したが、これは麻生を降ろしたいし、渡辺を快く思わない連中が、流したのだろう。一種の権力闘争だから、迂回献金くらいで両議員の見方を変えることはない。与謝野は財務省の言いなりで、消費税の上げを狙っているから、元々全く駄目だ。

 平沼新党や渡辺新党の話も出ている。早く衆議院を解散すればよかったのに、ズルズル引き延ばしてきたから、しっちゃかめっちゃかの様相を呈している。漫画首相の悲しい末路だ。

 自民党は新総裁を選べば、支持率は今より上がるだろうが、それでも民主党に政権を渡すことになるだろう。有権者は、自民党のまじめに問題に取り組まない体質、役人にべったりの体質を嫌がっているはずだ。だからそんな体質を変えると宣言しない限り、総裁を変えても、小手先の手段を弄しても、支持率は上がらないと思う。自民党の幹部にはダラダラ体質が染みついてしまっているから、何が問題なのか分からないようだ。(敬称略)

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