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生成文法と英和辞典の衰退 [英語学]

【2012年05月04日】-「言語学を研究している」と言うと、大抵「そんなものあるの」といった顔をされる。経済学や政治学なら誰もが知っているが、言語学には馴染みがないのだろう。

 「英語を中心にやっているから、言語学の中でも英語学だ」と言うと、もっと怪訝な顔をされる。「英語学」という言葉さえ知らない人が多いようだ。

・英和辞典という恩恵
 英語学という言葉を知らなくても、日本人なら誰もが英語学の恩恵を受けている。英語学を専攻している学者、つまり英語学者が英和辞典を作っているからだ。大学受験用の参考書、特に体系的な文法書を書くのも殆ど英語学者だ。

 英語学はいくつかの分野に分かれている。音声学、音韻論、文法(形態論、統語論)、意味論、語用論、文体論、語彙研究、英語史、社会言語学などだ。(この分類は絶対的なものではない。)

 英語を学問的に研究しているのなら、どんな内容でも英語学に入る。一般の人には、英語の学問的研究という発想が理解しにくいかも知れない。

 英語学の中心は文法、その中でも統語論だ。統語論は、語順や語の用法を研究する。統語論を研究する者が一番多く、研究も盛んだ。

 文法を研究している者が文法書を書くのは当然だが、辞書の編纂(へんさん)もするのはちょっと不思議だ。文学研究者や翻訳家がやってもいいはずだが、実際には英語学者が中心になって英和辞典を作っている。

 辞書を書くには語義を分類しなければならないし、文型や語法の知識も必要だから英語学者が中心になっているのだろう。

・英和辞典の衰退
 ところで日本で一番大きな英和辞典は、研究社が出している『英和大辞典』だ。数年前、2006年に出た第6版の巻頭を見て、びっくりした。15人ほどいる編集委員の顔ぶれが、1980年に出た第5版と殆ど同じだったからだ。

 平均寿命が延びたから、英語学者も長生きになったろう。だが中心になる者が26年も経っているのに殆ど同じということは、辞書の執筆に加われる学者が育っていないということではないか。

 執筆者の一覧には、『英語達人列伝』で有名になった斎藤兆史・東大教授の名があって少し安心したが、編集委員の一覧を見た時には驚いた。

 辞書の編纂に参加できる英語学者が減っているのは、60歳以下の文法家は多くが変形生成文法(統語理論の一種)をやっていて、文法現象や語法に弱いからではないと思う。

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