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jはiの下を伸ばして作った文字で、ヤ行の子音を表していた [英語学]

【2011年05月26日に掲載、28日に加筆訂正】-22日付のエントリーで「オランダ語でijは元々[i:]を表していたのだろう。」と書いたが、これは明らかに説明不足だった。ドイツ語を勉強していない人には、見当もつかない書き方だった。

 jは元々ヤ行の子音を表していた。ya, yu, yoのyが表す子音だ。

 jは文字として「ジェイ」と読むし、英語やフランス語ではジャ行の子音を表すから、大抵の日本人は元々ヤ行の音を表していたとは夢にも思わない。

 だがjがヤの音を表していたのは、この字の成り立ちを知れば納得が行く。jはiから作った文字なのだ。iの縦棒を下に伸ばして左に曲げて作ったのだ。意識的に作ったのはではなく、単語の終わりでは自然に下部が下に伸びたようだ。中世にはまだ印刷機がなく、どんな文書も人間が書き写していた。

 「イ」とヤ行の子音は似た音だから、西ヨーロッパでは17世紀頃までiとjを区別しないで使っていた。イギリスではjustをiustと書き、immortal をjmmortalと綴ることがあった。jがジャ行の音を表すようになったのは、フランス語などで「ヤ」などが「ジャ」に変わったからだ。

(uとvも似た形だが、元来は同じ字の違う形に過ぎなかった。やはり区別せずに使っていた。またvを二つつなげて、wを作った。[u][v][w]はどれも上下の唇を接近させて出すので、発音方法は似ている。)

 jは元々ヤ行の音を表していたから、オランダ語で「i:](イー)をijと書いただろうと思ったのだ。アメリカで出ている音声学の本では英語の「イー」を表すために、[ij]や[iy]という発音記号を使うことがあるそうだ。アメリカでは日本とは違う発音記号を使っている。イギリスの記号も本や辞書によって少し違う。世界中で同じ発音記号を使っていると言う人がいるが、それは間違いだ。

 jは元来ヤ行の音を表したので、ドイツ語やオランダ語では今でもそう使う。「日本」をJapan と書いて、「ヤーパン」と言う。

 またIPA方式の発音記号では[j]がヤ行の音を表すので、日本の英和辞典はyes は[jes]と書き、yetは [jet]と書く。

 中オランダ語(Middle Dutch)でもij と書いていたそうで、歴史の長い綴りだ。英語ではijとは書かない。

 オランダ語史も3期に分けて、英語史と境目が同じだ。500年から1150年をOld Dutchと言い、1150年から1500年までがMiddle Dutch、そのあとをModern Dutchと分けるそうだ。

・資料
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_the_alphabet#Latin_alphabet
遠藤幸子『英語史で答える英語の不思議』(南雲堂フェニックス)
Bernd Kortmann. 2005. English Linguistics, Berlin, p.60
http://en.wikipedia.org/wiki/Dutch_language#History

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