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生成文法と英語研究の危機 [英語学]

【2012年05月06日】-前回の続きを書く。本当は生成文法とは何かを説明しなければならないが、それは大変なのでまたの機会に譲る。

 今回は私が最近感じた他の事例を書くことにする。

 先日、本屋で『英語語法レファレンス』という本を手に取った。著者は柏野健次氏で、三省堂が2010年7月に発行した。氏は大阪樟蔭女子大学の教授だが、失礼ながらこの大学は初めて聞いた。

 以前なら、こんなことはなかったろう。東京の有名大学の英語教師は軒並み生成文法をやっているので、出版社は大阪の先生に執筆を依頼したのではないかと思った。

・中学教科書
 また同じく三省堂が出している中学教科書の『ニュークラウン』を目にする機会もあった。著者として十数人の大学教師の名が並んでいたが、こっちも聞いたことがない大学ばかりだった。

 この教科書はやたらに難しいが、問題がある。イギリスではMrやMrsのような略語を書く時ピリオドは打たないが、アメリカではMr.やMrs.のようにピリオドを打つ。『ニュークラウン』はアメリカ英語を教えているはずなのに、ピリオドがないのだ。

 また引用符で文が終わる場合、He said, "I'll go."のように."と書くのが普通だが、この教科書ではHe said, "I'll go"のようにピリオドを打たない。こんな表記はないと思う。

 さらにインターネットで公開している「ワークシート」の中学1年の分には、「私たちは毎日バスケットボールをしません。」を表すように、

We ( play / don't ) basketball every day.

を並べ替える問題が載っている。

 正解は We don't play basketball every day. だが、これは部分否定の文だ。だが日本文は全面否定の文のように読める。

 つまり英文では「バスケットボールは毎日はしないが、週に数回はする」といった意味なのに、和訳では「バスケットボールは週に1回もしない」とも受け取れる。「私たちはバスケットボールを毎日するわけではありません。」と訳せば、部分否定がはっきりする。だがどう訳そうとも、中1の教材にはふさわしくない。

 生成文法の論文ばかり読んでいても中学や高校の英語教科書は書けるはずだが、中学教科書を書くのは生成文法の分からない二流学者なのかと疑念が湧いた。

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生成文法と英和辞典の衰退 [英語学]

【2012年05月04日】-「言語学を研究している」と言うと、大抵「そんなものあるの」といった顔をされる。経済学や政治学なら誰もが知っているが、言語学には馴染みがないのだろう。

 「英語を中心にやっているから、言語学の中でも英語学だ」と言うと、もっと怪訝な顔をされる。「英語学」という言葉さえ知らない人が多いようだ。

・英和辞典という恩恵
 英語学という言葉を知らなくても、日本人なら誰もが英語学の恩恵を受けている。英語学を専攻している学者、つまり英語学者が英和辞典を作っているからだ。大学受験用の参考書、特に体系的な文法書を書くのも殆ど英語学者だ。

 英語学はいくつかの分野に分かれている。音声学、音韻論、文法(形態論、統語論)、意味論、語用論、文体論、語彙研究、英語史、社会言語学などだ。(この分類は絶対的なものではない。)

 英語を学問的に研究しているのなら、どんな内容でも英語学に入る。一般の人には、英語の学問的研究という発想が理解しにくいかも知れない。

 英語学の中心は文法、その中でも統語論だ。統語論は、語順や語の用法を研究する。統語論を研究する者が一番多く、研究も盛んだ。

 文法を研究している者が文法書を書くのは当然だが、辞書の編纂(へんさん)もするのはちょっと不思議だ。文学研究者や翻訳家がやってもいいはずだが、実際には英語学者が中心になって英和辞典を作っている。

 辞書を書くには語義を分類しなければならないし、文型や語法の知識も必要だから英語学者が中心になっているのだろう。

・英和辞典の衰退
 ところで日本で一番大きな英和辞典は、研究社が出している『英和大辞典』だ。数年前、2006年に出た第6版の巻頭を見て、びっくりした。15人ほどいる編集委員の顔ぶれが、1980年に出た第5版と殆ど同じだったからだ。

 平均寿命が延びたから、英語学者も長生きになったろう。だが中心になる者が26年も経っているのに殆ど同じということは、辞書の執筆に加われる学者が育っていないということではないか。

 執筆者の一覧には、『英語達人列伝』で有名になった斎藤兆史・東大教授の名があって少し安心したが、編集委員の一覧を見た時には驚いた。

 辞書の編纂に参加できる英語学者が減っているのは、60歳以下の文法家は多くが変形生成文法(統語理論の一種)をやっていて、文法現象や語法に弱いからではないと思う。

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The Tsunami and the Cherry Blossom は『津波と桜』と訳せ [英語学]

【2012年02月29日】-イギリス人の女性監督は東日本大震災の記録映画として『津波そして桜』を作ったが、それをアメリカの映画芸術学アカデミーは1月末アカデミー賞の候補にノミネートした。

 だが昨日の発表では、短編ドキュメンタリー賞の受賞を逃した。メディアはかなり大きく扱った。

 この邦題は不自然だ。『津波と桜』のはずだ。「そして」は文や節を結ぶことが多く、名詞をつなげることはあまりない。

 「英語の and を直訳したのではないか」と思っていたが、原題はやはり The Tsunami and the Cherry Blossom だった。

 and には「そして」という訳語があるが、名詞と名詞をつなぐ場合は「と」と訳すのが普通だ。cats and dogs は「猫と犬」であって、「猫そして犬」ではない。

 監督はイギリス人だから、うまく日本語に訳せなかったのか。それとも日本人が「津波だけでも桜だけでもなく、両方なのだ」と強調したいから、わざと「そして」と訳したのか。いずれにしても不自然な訳語だ。こんな誤訳をそのまま言うメディアの見識を疑う。

 最近、政党の「たちあがれ日本」が英語の名称を The Sunrise Party of Japan としていることを知った。sunrise は「日の出」の意味だから、「たちあがれ」とは違う。

 大多数の日本人は、国語も英語もちゃんとできないのだろうか。
 

・参考資料
http://thetsunamiandthecherryblossom.com/

http://www.japantoday.com/category/politics/view/ishihara-son-embroiled-in-public-row-over-new-political-party

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英語ではどういう時に受動態を使うか [英語学]

【2011年07月20日】-英語教育では、能動態の文を書き換えて受動態を教えるが、それでは受動態の必要性は分からないと書いた。もっと詳しく、どのような場合に受動態を使うか列挙してみる。

1. 動作主が分からない場合。
His father was killed in the second world war.(彼のお父さんは第2次世界大戦で死んだ。)

2.動作主は明白で、言う必要がない場合。
He was elected Member of Parliament last year.(彼は去年国会議員に選ばれた。)

3.話者が動作主に関心を示さない場合。
The doctor was sent for.(医者が呼ばれた。)

4.話題の中心が動作主でなく、動作を受ける側にある場合。
His son was run over by a car.(彼の息子は車に轢かれた。)

5.科学論文などで、動作主が自分に言及したくない場合。客観的な印象を与えることができる。

If oxygen and hydrogen is mixed, water is produced.(酸素と水素を混ぜると水ができる。)

6.話しの進め方から、動作を受ける側を主語にした方がいい場合。
When he was walking along the street, he fell down and was taken to the hospital.(彼は町を歩いている時、倒れて病院に運ばれた。)

 イェスペルセンは「7割以上の受け身にby ~はない」と書いている。動作主のない場合が殆どなのだ。

・参考資料
Otto Jespersen(1933)Essentials of English Grammar
Quirk, Greenbaum(1997)A Student's Grammar of The English Language

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ギリシャ語には受動態と能動態に加えて中動態があった [英語学]

【2011年07月18日】-昨日「受動態はpassive voiceの訳だ」と書いたが、能動態を英語ではactive voiceと言う。active(活動的な)とpassive(受動的な)が対応しているわけだ。文法用語を英語で知ると、理解が深まることがある。このレベルの英単語を覚えることにも役立つ。

 ところで言語学の本を読んでいると。middle voiceというのが出てくる。「中動態」と訳している。能動でも受動でもなく「中間の態」というわけだ。ギリシャ語やサンスクリット語にあったvoiceで、主に行為が自分自身に及ぶ場合に使った。つまり「私は鏡の中に私を見た」(つまり「自分を見た」)などと言いたい時に使った態だ。英語など現代語では、I looked at myself in the mirror. のように再帰代名詞を使っていう場合だ。

・受動態と融合
 ギリシャ語やサンスクリット語にあったと言っても全時制にあったのではなく、殆どの時制で受動態と同じ形だった。印欧祖語の段階では違う語形だったのだろうが、ギリシャ語などの段階では受動態と殆ど同じになったのだと思う。

 ラテン語では特有の語形は全くなく、全時制で受動態と同形だった。だからラテン文法では「中動態」と言わないが、受動態の語形で他動詞のように目的語を取るから不思議な感じがする。

 その後ギリシャ語では中動態の変化は段々消えて、現代ギリシャ語では受動態と全く同じ語形になった。ラテン語の子孫であるフランス語やスペイン語には、中動態の痕跡さえない。

 中動態は要らないから消えたのではないか。再帰代名詞を使えば言い表せることだから、中動態を保持する必要はない。印欧祖語やギリシャ語にあった希求法もなくなって、接続法(仮定法)に吸収された。

 英語の受動態も仮に必要がないのなら、消えていたはずだ。まだ残っているのは理由があるからに違いない。英語の授業では、能動態の文を機械的に書き換えさせるばかりでなく、どんな時に受動態を使うのか説明すべきだ。

・参考資料
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3309568.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Voice_(grammar)#Middle

高津春繁『印欧語比較言語文法』(岩波全書)
MacDonell, "A Sanskrit Grammar for Students"

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受動態の和訳は奇妙 [英語学]

【2011年07月17日に掲載、18日に訂正】-英語の受動態の教材では、日本語訳が特に不自然だ。

 「この自転車は健によって使われています。」「この机はトムによって作られました。」などと書いてある。奇妙な言い方だ。日本語では普通「この自転車は健が使っています。」「この机はトムが作りました。」と言う。

 英語では「自転車」や「机」について話したくなって、それで文を始めた場合は動詞の部分はbe+過去分詞の受動態にしなくてはならないが、日本語では物で文を始めても受け身にする必要はない。「これは健が使っている」「これはトムが作った」と言える。

 「あなたたちは加藤先生に教えられていますか。」は一層奇妙だ。日本語では普通「教わっていますか」と言うのだ。「教える」には、受け身を表す「教わる」という対応形があるから、それを使えばいい。

・国語では人が主語で被害を表す
 日本語の「れる」「られる」は欧州語の受動態とは違って、被害を表すのが基本だと思う。「先生に怒られた」「友達に先に行かれた」「子供に先立たれた」などのように、自分が困った事態に陥ったことを表すのが基本的な用法だろう。

 それに日本語の受け身の文では、主語は殆どの場合人だ。物を主語にして「これは使われています」などと言うと不自然だ。だから英語の教材でもなるべく人を主語にしておけば、和訳した時に不自然にならないで済む。14日と15日のエントリーに載せた練習問題では、元の文の目的語をなるべく人にしておいた。

 メディアも政治家も役人も不自然な受け身を乱用するが、その一因が英語教育にあるのなら、受動態の文の主語はなるべく人にしておいた方がいい。英語を勉強して言語感覚がおかしくなり、日本語が下手になってしまっては本末転倒だ。物が主語になっている時、教師は直訳に加えて意訳も添えて配慮する必要がある。

 なお受動態はpassive voiceの訳語だ。「声」を意味するvoiceを使うのは、ラテン語で「態」をvox(ウォークス)と言い、それを直訳したからのようだ。vox はvoiceの語源だが、「声」に加えて「語」や「発言」という意味もある。

・参考資料
http://tb.sanseido.co.jp/english/newcrown/200710worksheet-data/worksheets_book2_ver4.doc

http://study.005net.com/English/3/ukemi.pdf

Zandvoort, "A Handbook of English Grammar"(1975) p.53

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英語の受動態は動作主を言わないためにある [英語学]

【2011年07月15日】-もう少し、受動態に変換する文を考えてみた。第3文型の練習問題としても使える。

1. Mary loves John.
2. Everyone likes Jane.
3. My parents scolded me yesterday.

・受動態の目的
 中学生向けの教材を見ていて内容が不自然だと思ったのは、語彙に制限があることもあるが、受動態にする必要のない文があったからだ。たとえば

 This book is liked by me.(この本は私に好かれています)

はいかにも不自然だ。こんなことを言う人はまず考えられない。大抵、I like this book. か This book is my favorite. と言うはずだ。

 能動態の文を書き換えて受動態を教えるが、元の文の主語をbyのあとに置き、元の文の目的語を主語に据えると長くなるだけで、何のために受動態にするのか分からない。

 受動態は元の文の主語を言わないためにあるはずだ。何かをした人(動作主)のことはどうでもよくて、何が起きたのかを伝えたい時に受動態にするはずだ。たとえば

 He was killed yesterday in a road accident.(彼は昨日、交通事故で死んだ。)

では誰が彼を轢(ひ)いたかは関心の的でなく、彼が亡くなったことに重点を置いているはずだ。よく「元の主語のby 以下は省略することが多い」と説明するが、動作主に言及したくないのだから省略するのは当たり前だ。

 初級の段階だから仕方がない面もあるが、なぜ受動態の文を使うのか理由を言わないと、生徒は呆気にとられてしまうと思う。

・参考資料
http://choidebu.com/bunpou/ukemi.htm
Leech, A Communicative Grammar of English

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タグ:受動態 理由
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英語には複数形にする国名がある [英語学]

【2011年06月14日に掲載、16日に大幅に加筆訂正】-フィリピンという国名を英語で言う時は、The Philippines(フィリピーンズ)と複数形にするので、注意されたい。複数形にする国名は少ないが、オランダも定冠詞をつけて、The Netherlands(ネザーランズ)と言う。

 国名ではないが、都市名で複数形にするものもある。英語でイタリアのナポリはNaples(ネイプルズ)と言い、ギリシャのアテネはAthens(アスンズ)と言うが、両方とも複数形だ。

 後者に関してはギリシャ語でAthenai(アテーナイ)と複数形だからだと思う。今の日本で「アテネ」と言っているのは、この綴りを現代ギリシャ語ではそう読むからだろう。

 前者に関しては難しい。イタリア語ではNapoliと言い、これを複数形に解釈したとも考えられるが、本来複数形ではない。イタリア語では-oで終わる名詞はそれを-iに変えて複数形を作る。libro(「リブロ」と読み、意味は「本」)の複数形はlibri(リブリ)だ。

 だがNapoliの語源はギリシャ語であり、nea polis(ネア・ポリス、「新しい都市」)が縮まったから、-iで終わっていても複数形ではない。イギリス人は誤解したのか。

 ちなみにpolisは「都市国家」という意味で世界史にも出てくる。nea も部分的には誰でも知っている。neon signのneonはこの形容詞の変化形だ。男性形はneos(ネオス)と言って、それの女性形がneaで、中性形がneonだ。polisが女性名詞だから、形容詞も女性形にしたのだ。

 ギリシャ語でもドイツ語やロシア語のように、名詞には男性・女性・中性という文法上の性別があり、形容詞はそれに合わせて変化する。英語のように、名詞が文法上の性を殆ど失っているのは印欧語では例外だ。

 英語・フランス語・スペイン語では、名詞を複数形にする時には-sをつけるが、こんなに簡単に複数形が作れるのも印欧語では少数派だ。

 オリンピックも英語では、The OlympicsかOlympic Gamesと言って、複数形にする。細かいことだが、しっかり覚えないと正しい英語は身に付かない。

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16世紀以降の英語を「近代英語」と言う理由 [英語学]

【2011年05月30日】-Old English を「古英語」と訳すのはこなれないと書いた。「古い英語」は意味が通るが、普通の英米人はMiddle English をおかしな言い方と思うだろう。また10世紀頃の英語をOld Englishと言って、500年前からの英語をModern Englishと表現するのは合わない。

 実は100年くらい前までは最近の英語をNew Englishと言っていた。「古い英語」と「新しい英語」なら、辻褄が合う。だが500年前の英語を「新しい」というのも奇妙なので、Modern Englishと言い替えたのだろう。

 ドイツ語では今でも「近代英語」をNeuenglisch(ノイ・エングリッシュ)と言っている。英語に訳せばNew Englishだ。英語の歴史を3期に分けるのは、ドイツで始まったのかも知れない。

 19世紀には、言語研究はドイツ語圏が一番盛んだった。英語の研究もイギリスより進んでいたようだ。古い英語を読める人はイギリスの方が多かったろうが、研究や分析はドイツの大学の方が進歩していたようなのだ。不思議なことだが、あり得ないことではない。

 またModern Englishを「現代英語」でなく「近代英語」と訳すのは、16世紀は近代だが現代ではないからだ。「ごく最近の英語」「数十年前からの英語」と言いたい時は、Contemporary EnglishやPresent-day Englishと言う。

 「古高ドイツ語」や「中高ドイツ語」もこなれない訳だ。ドイツ語ではAlthochdeutsch, Mittelhochdeutschと言う。ドイツ語では複合語は続けて書くので分かりにくいが、Alt-hoch-deutsch, Mittel-hoch-deutschと分かれる。

 altはoldのこと、hochはhighだから語形は英語に似ている。読み方は「アルト・ホーフ・ドイチュ」「ミテル・ホーフ・ドイチュ」だ。

・参考資料
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_german#High_German
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E4%B8%96

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ドイツ語史も英語史と同じ区分 [英語学]

【2011年05月28日】-英語史もオランダ語史も1150年と1500年を境目にすると書いたが、ドイツ語史も同じ年代で分けるようだ。

Old High German(古高ドイツ語)(800年から1150年)
Middle High German(中高ドイツ語)(1150年から1500年)
New High German(新高ドイツ語)(1500年から現在)

 High German(高地ドイツ語)はドイツ南部やオーストリアの方言のことだ。標準ドイツ語は南部の方言を元にして成立したので、Old High Germanは現代ドイツ語の祖先ということになる。Highというのは単に標高が高いからだと思う。

 北部は標高が低いので、北部方言は低地ドイツ語(Low German)言う。北部と南部では語形がかなり違うので、分けて考えるのが普通だ。

 英語、ドイツ語、オランダ語の三ヶ国語がどれも1150年と1500年を境に変わるというのは面白いことだ。だが欧米の学問も縦割りで言語ごとに研究するので、どうして三ヶ国語が同じ時期に変わるのか考究していないようだ。

 なお「古英語」や「中英語」はこなれない言い方だ。「古代英語」「中世英語」を訳していたこともあるが、ヨーロッパ史で古代は紀元5世紀までだし中世は5世紀から15世紀なので、Old Englishを「古代英語」と訳すと時期がずれてしまう。

 また「古代の」「中世の」を英語で言うと、ancient, medievalだ。そこで仕方なく「古英語」「中英語」「古高ドイツ語」などと言っている。

・参考資料
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_german#High_German

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jはiの下を伸ばして作った文字で、ヤ行の子音を表していた [英語学]

【2011年05月26日に掲載、28日に加筆訂正】-22日付のエントリーで「オランダ語でijは元々[i:]を表していたのだろう。」と書いたが、これは明らかに説明不足だった。ドイツ語を勉強していない人には、見当もつかない書き方だった。

 jは元々ヤ行の子音を表していた。ya, yu, yoのyが表す子音だ。

 jは文字として「ジェイ」と読むし、英語やフランス語ではジャ行の子音を表すから、大抵の日本人は元々ヤ行の音を表していたとは夢にも思わない。

 だがjがヤの音を表していたのは、この字の成り立ちを知れば納得が行く。jはiから作った文字なのだ。iの縦棒を下に伸ばして左に曲げて作ったのだ。意識的に作ったのはではなく、単語の終わりでは自然に下部が下に伸びたようだ。中世にはまだ印刷機がなく、どんな文書も人間が書き写していた。

 「イ」とヤ行の子音は似た音だから、西ヨーロッパでは17世紀頃までiとjを区別しないで使っていた。イギリスではjustをiustと書き、immortal をjmmortalと綴ることがあった。jがジャ行の音を表すようになったのは、フランス語などで「ヤ」などが「ジャ」に変わったからだ。

(uとvも似た形だが、元来は同じ字の違う形に過ぎなかった。やはり区別せずに使っていた。またvを二つつなげて、wを作った。[u][v][w]はどれも上下の唇を接近させて出すので、発音方法は似ている。)

 jは元々ヤ行の音を表していたから、オランダ語で「i:](イー)をijと書いただろうと思ったのだ。アメリカで出ている音声学の本では英語の「イー」を表すために、[ij]や[iy]という発音記号を使うことがあるそうだ。アメリカでは日本とは違う発音記号を使っている。イギリスの記号も本や辞書によって少し違う。世界中で同じ発音記号を使っていると言う人がいるが、それは間違いだ。

 jは元来ヤ行の音を表したので、ドイツ語やオランダ語では今でもそう使う。「日本」をJapan と書いて、「ヤーパン」と言う。

 またIPA方式の発音記号では[j]がヤ行の音を表すので、日本の英和辞典はyes は[jes]と書き、yetは [jet]と書く。

 中オランダ語(Middle Dutch)でもij と書いていたそうで、歴史の長い綴りだ。英語ではijとは書かない。

 オランダ語史も3期に分けて、英語史と境目が同じだ。500年から1150年をOld Dutchと言い、1150年から1500年までがMiddle Dutch、そのあとをModern Dutchと分けるそうだ。

・資料
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_the_alphabet#Latin_alphabet
遠藤幸子『英語史で答える英語の不思議』(南雲堂フェニックス)
Bernd Kortmann. 2005. English Linguistics, Berlin, p.60
http://en.wikipedia.org/wiki/Dutch_language#History

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英語の深い理解には英語史が必須 [英語学]

【2011年05月24日に執筆、29日に訂正】-段々英語史の領域に入ってきたので、少ししっかり説明しておこう。

 「英語にも古文がある」と言うと驚く人が多い。日本語に古文があるように、英語にも古文はあった。シェークスピアが活躍したのは16世紀だが、チョーサーは14世紀の詩人だ。もっと前の英文も残っている。

 英語がヨーロッパ大陸のゲルマン語から分かれたのは、西暦449年のことだ。この年アングル人やサクソン人はドイツ北部からブリテン島に移住し始めた。それまでブリテン島にはケルト人が住んでいたが、このあとアングル人などが増えていった。

 アングル人などがブリテン島に住み始めたのは5世紀半ばだが、初めのうちは文章を殆ど書いていない。7世紀になると文献を残すようになる。そのため英語の歴史は7世紀に始まると考えることが多い。英語は1150年頃に境にして発音や語彙が変わるので、ここまでをOld English と言う。

 そのあと1500年までをMiddle Englishと言う。1500年から現代まではModern Englishだ。1500年以降、英語の語彙や文法は大きくは変わっていない。つまり英語は3期に分けて考えるのが学界の定説だ。

Old English(古英語)(600年から1150年)
Middle English(中英語)(1150年から1500年)
Modern English(近代英語)(1500年から現在)

・各期の特徴
 Old English では名詞や形容詞が格変化し、ドイツ語のように4格あった。動詞の人称変化も、今より激しかった。今と全く違うので、イギリス人もしっかりと学ばないと理解できない。

 Middle Englishに入ると、綴りは違うが今の英語に近くなる。辞書を一生懸命引けば、大意はつかめる。

 Modern Englishになると、もっと分かりやすくなる。文法や基本語彙は殆ど同じなので、慣れれば大体分かるようになる。500年も前だが、英語の基本はこの頃から変わっていない。5年に1回、英語の中学教科書を作り替える必要はない。

 何語にも古文がある。突然現在の言語が現れる訳ではなく、百年前や千年前には現代語の祖先に当たる言語があった。古文を知らないと、現代語の仕組みはよく分からない。おとといからのエントリーを読んでも、それが分かるだろう。

 それなのに、英語教師は英語史の重要性を知らない。英語史を専攻している大学教師さえ重要性を悟っていない。嘆かわしい状況だ。

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英語やドイツ語の「アウ」は3百年前まで「ウー」だった [英語学]

【2011年05月23日】-昨日は[i:]だった音が英語では[ai]に、オランダ語では[ɛi]になったと書いた。ドイツ語の[ai]も元々は[i:]だった。「氷」は英語でiceだが、ドイツ語ではEisと書いて、同じく[ais]と言う。どちらも13世紀頃までは[i:s]と言っていた筈だ。ゲルマン語派に属する3ヶ国語が、似たような音韻変化を遂げたのだ。

 [u:]も3ヶ国語で同じように変わった。昨日書いたように、オランダ語では「家」をhuisと書いて「ハウス」と言うから、英語のhouse と殆ど同じ発音だ。ドイツ語でも同じ発音で、Hausと書く。

 西暦700年から1150年くらいまでのOld English では、「家」をhusと書いて[hu:s]と言った。ドイツ語の祖先であるOld High German でもhusだったし、現代のスウェーデン語でもそう書く。

 英語、ドイツ語、オランダ語では[u:]が殆ど同じ変化をしたが、北欧語ではそうならなかった訳だ。ただし、英語などで[u:]が「au]に変わった時期は異なると思う。

 このように英独蘭の3ヶ国語には密接なつながりがある。


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オランダ語でij を「エイ」と読む理由 [英語学]

【2011年05月22日に掲載、23日に訂正】-前回オランダ語ではijを[ɛi]と読むと書いた。不思議な読み方だが、これには次のような事情があるようだ。

 元々ij は[i:]を表していた。だが発音が段々変わって[ɛi]になったが、綴りは元のままなので、ijを[ɛi]と読むようになった。

 英語でもこのような音韻変化はある。iceは今では[ais]と言うが、元々は[i:s]と言っていた。「イー」が段々変わって、「アイ」になった訳だ。大母音推移(Great Vowel Shift)という現象だ。

 Great Vowel Shift が起きたのは15世紀から18世紀にかけてだから、起きる前に英語にあった語はこの音韻変化を受けている。だが、そのあと英語に入った単語はこの変化を受けていない。そのためフランス語から英語に入ったmachine やpoliceはiを[i:]と読んでいる。大母音推移は、英語で同じ綴りを何通りにも読む理由の一つだ。

 本来の[i:]を英語では[ai]と、オランダ語では[ɛi]と言うから、wine はオランダ語ではwijnと書いて[wɛin]と言う。(オランダ語でもwは大抵[v]と読む。ただし英語やドイツ語の[v]とはちょっと違う。)

・英単語にそっくり
 オランダの東部にナイメーヘンという都市があるが、Nijmegenと書いてオランダ語では[ɛime:xən](ネイメーヘン)と読む。(gはドイツ語のchのように[x]と読む。)元々は「ニーメーヘン」だったが、英語に入って大母音推移を受けたために「アイ」になり、オランダ語では「エイ」に変わったのだろう。日本語の「ナイメーヘン」という読み方は、英語から入ってきたのだと思う。

 他にもオランダ語特有の読み方を少し書いておく。

 oeは[u]と読む。例えばboek[buk]で、英語のように「本」の意味。発音は殆ど同じ。

 ouは英語のように[au]と読む。例はoud[aut]で、英語のoldと同源だ。ドイツ語のように、音節の終わりの有声子音字は対応する無声音として読む。

  uiは発音記号では[œy]と書くが、オランダ人の発音を聞くと[au]に聞こえる。例えばhuis だ。「家」の意味だから、英語のhouse と発音は殆ど同じだ。

 これだけ知っていると、オランダ語の基本的な単語は大体読めるようになる。

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アメリカとフランスにはドイツ系の名前がたくさんある [英語学]

【2011年05月21日】-シュワルツネッガーの妻は旧姓がシュライバーなので、ドイツ系でSchreiber と書くのだろうと思った。ドイツ語で「書く」はschreibenと言い、英語のように語幹に-erをつけると「書く人」「筆記者」を表す。

 綴りを見たらShriverなので、オランダ系か北ドイツなのかと思った。オランダ語では「書く」をschrijvenと言うし、北ドイツの方言はオランダ語に似ているからだ。読み方は「シュレイベン」だ。ijを「エイ」と読む。

 だがウィキペディアで、マリア・シュライバーのお父さんのサージェント・シュライバーのページを見たら、「元々はSchreiberだった」とあった。ドイツ語の綴りのままだと読みにくいから、アメリカに移住した人は綴りを変えると聞いたことがあるが、音まで変えるのは初めてだ。bとvは違う音だ。発音が変わったのだろう。

 サージェント・シュライバーはもう亡くなっているが、最近ドイツ語圏から移民したのではなく、祖先は1776年のメリーランド憲法に署名したというから、200年以上前に渡米した訳だ。

 またシュライバー女史は離婚交渉をするために弁護士のローラ・ワッサーを雇ったが、綴りはLaura Wasserだからこれもドイツ系だ。英語のwaterをドイツ語ではWasserという。「バッサー」か「バサー」と読む。

・フランスにもドイツ系
 IMFの専務理事がホテルの従業員に抱き付いて逮捕されたが、この人は「ストロス・カーン」と言う。不思議な名前だと思っていたが、綴りを見たら納得した。Strauss Kahn だ。前半をドイツ語読みすると「シュトラウス」だし、hで長母音を表すのはドイツ語特有の綴りだ。先祖はドイツ系なのだろう。フランス語でもauは英語と同じく「オ」と読む。

 ストロス・カーンは法律と経済を修めた秀才だが、3度も結婚したし以前もセクハラ事件を起こしたので、女好きと思われる。

 以前ラジオ・フランス語講座に、「ワッセルマン」というフランス人がゲストとして出ていた。Wasserman と書くのだろう。フランス語ではerは「エル」と読んで、「ア」とは読まない。これもきっとドイツ系だ。アメリカにもフランスにもドイツ系の人が随分いるようだ。

 ドイツ語の読み方だけでも知っていると、英語を深く理解できる。ぜひ勉強しましょう。

・参考資料
http://en.wikipedia.org/wiki/Maria_Shriver
http://en.wikipedia.org/wiki/Sargent_Shriver

http://en.wikipedia.org/wiki/Dominique_Strauss-Kahn
http://fr.wikipedia.org/wiki/Dominique_Strauss-Kahn

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英単語の読み方(7)=de-, re-, pre- を[i:]と読む場合 [英語学]

【2010年11月02日】-de-, re-, pre- を「欠如」「再び」「前に」という意味で使う場合は、第2アクセントが現れて[i:]と伸ばします。以下に書いたのはすべて動詞です。
 

deice[di:'ais], depopulate[d`i:p'ɔpjuleit],
reconstruct[r`i:kənstr'ʌkt], reprint[r`i:pr'int], reuse[r`i:j'u:z]
prefabricate[pr`i:f'æbrikeit],  pre-empt[pr`i:'empt]

 deice は 「氷(ice)を除去する」という意味の動詞です。de- の意味がはっきり出ています。

 reconstruct は「再構成する」の意味、reprint は「印刷し直す」のことです。reuse は「再び使う」の意味ですが、use という動詞もあるし、「再び」の意味がはっきり出ているので、[ri:]と読みます。

・ハイフンで区切った場合も[i:]
 また、re-act, re-count, re-create, pre-order のように接頭辞と語幹の間にハイフンがある場合も、原則として[i:]と読みます。

 re-count は recount とは違う語です。count は「数える」の意味なので、それに re- をつけると「数え直す」を表します。ですが、 recount は「詳しく話す」の意味なので、全く違います。

 re-create は「作り直す」の意味ですが、recreate は「気晴らしをする」の意味です。

 de- や re- の読み方は難しいので、英語がうまい人でも割といい加減にしているようです。英和辞典にもしっかり区別していないのがあります。

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英単語の読み方(6)=de-, re-, pre- をどう読むか [英語学]

【2010年10月31日に掲載、11月2日訂正】-23日付のエントリーでは語頭のe- をどう読んだらいいか書きましたが、 語頭のde-, re-, pre- をどう読むかも難しいところです。どれも読み方が三通りあります。[di][di:][de], [ri][ri:][re], [pri][pi:][pre]の三通りです。

・語源
 de- は元々ラテン語の前置詞で、[de:]と読みました。「~から」という意味でした。英語で接頭辞として使うと、「否定」や「欠乏」を表します。

 re- はラテン語では[re:]と読んで、「再び」の意味でした。ラテン語でも接頭辞だったようです。

 pre- もラテン語では前置詞で、 prae と書いて[prai]か[prae]と読みました。意味は「~の前に」です。英語の before に相当します。

・[i]の場合
 英語においてこの三つの接頭辞の基本的な読み方は、[di][ri][pri]です。たとえば

 decide[dis'aid],  defend[dif'end], define[dif'ain]

 remember[rim'embə], report[rip'ɔ:t],

 prefer[prif'ə:], prepare[prip'ɛə],

などです。

上の挙げた単語では、接頭辞にアクセントがありません。アクセントのない時は大抵「イ」です。

・[e]の場合
 一方、アクセントがある時は、「エ」か「イー」と読みます。まず「エ」の場合ですが、接頭辞に第1アクセントがある場合と第2アクセントがある場合があります。
 
 初めに接頭辞に第1アクセントのある場合です。

delicate,[d'elikit], decorate[d'ekəreit],
record[r'ekɔ:d]

次に接頭辞に第2アクセントのある場合ですが、これは殆ど場合対応する動詞から作った名詞です。

definition[d`efin'iʃən]
revolution[r`evol'u:ʃən]
preparation[pr`epər'eiʃən]

などです。

動詞と、対応する名詞を並べると、次のようになります

define[dif'ain]          definition[d`efin'iʃən]
revolve [riv'ɔlv]       revolution[r`evəl'u:ʃən]
prepare[prip'ɛə]   preparation[pr`epər'eiʃən]
present[priz'ent]    presentation[pr`ezent'eiʃən]

 動詞の時は後半(語幹)にアクセントがあって、接頭辞は[i]と読み、名詞の時は前半(接頭辞)にアクセントがあって、[e]と読む訳です。このようなアクセントの移動を予備校などでは「名前動後」と言います。

名詞形では接頭辞に第1アクセントがあり、[e]と読む場合もあります。
refer[rif'ə:], reference[r'efərəns]
prefer[prif'ə:], preference[pr'efərəns]
  

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英単語の読み方(5)=強音節と弱音節は交互に現れることが多い [英語学]

【2010年10月30日】-前回は4音節以上の英単語には第2アクセントも現れることがあると書きました。ではこの第2アクセントはどの音節に現れやすいでしょうか。

 それは第1アクセントより2つ前の音節に現れることが多いのです。その理由を説明しましょう。

 第1アクセントは大抵語の終わりの方にあります。英単語では動詞を名詞にした場合、大抵アクセントが後ろに移動します。

 28日のエントリーで situation という語を挙げましたが、これは元々 situate [s'itʃueit] という動詞の名詞形です。situate は「置く」据える」という意味です。

 situate の語尾に -ion を付けて名詞形にしたら、アクセントは  [ei]に移りました。英語では大抵 -ation に第1アクセントがあります。

 -ation の二つ前の音節は[i]ですから、法則ではそこに第2アクセントが来るはずで、実際に[s`itʃu'eiʃən]とそうなっています。

 英語ではアクセントのある音節とない音節が続くのを嫌うようで、強い音節と弱い音節が交互に現れることが多いのです。だから第2アクセントは、第1アクセントの二つ前の音節に現れすいのです。英語の詩でも、強い音節と弱い音節が交互に来るのが基本のようです。

 英単語では、強音節と弱音節が交互に起きやすいと覚えておくと、第2音節の位置は覚えやすくなります。

 今までに挙げた語ではどれも、第1アクセントの二つ前の音節に、第2アクセントが来ています。

confidential [k`ənfid'enʃəl],
congratulation [kəngr`ætʃul'eiʃən]
international [`intən'æʃənəl]

 でも例外もあります。organization ではと第1アクセントの三つ前の音節に第2アクセントがあって、[`ɔ:gəniz'eiʃən]と発音します。

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英単語の読み方(2)=ex-を[iks]と読む場合と[igz]と読む場合 [英語学]

【2010年10月23日に掲載、24日に改訂】-前回のエントリーで、アクセントのない語頭の e  は「イ」と読んだ方がいいと説明しましたが、ex- という接頭辞では  x  の読み方も二通りあります。つまり[ks]と無声音に読むか、[gz]と有声音に読むかの二通りです。

 でも、ある程度法則があります。ex- にアクセントがある時は[eks]と無声音に読みます。たとえば、exercise では e にアクセントがあるので、[eksəsaiz]と、無声音に読みます。

 またex- の後が子音の時は[iks]と無声音に読みます。expect やexchange がその例です。

 ex- のあとに母音が来て、そこにアクセントがある時は[igz]と有声音に読むことが多いのです。exact や example では 次に a という母音が来て、そこにアクセントがあるので、[igzakt][igzampl]と、有声音に読みます。

・派生語にも
 この法則は派生語にも当てはまります。動詞のexecute は語頭にアクセントがあるので、[eksikju:t]と無声音に読みます。「執行」という意味の execution は第1音節でなく、第3音節にアクセントがあるので、[eksikju:ʃən]と無声音です。
 
 人を表す名詞の executive は第2音節にアクセントがあるので、[igzekjutiv]と有声音に読みます。

 exhibit は動詞ですが、第2音節は母音で始まり、アクセントがあるので[igzibit]です。名詞のexhibition では第3音節にアクセントがあるので、xは無声音に読みます。

 例外もあって、exit とexile は二通りの読み方があります。つまり[eksit][egzit]と、[eksail][egzail]があります。

まとめると
ex-にアクセントがある場合は[eks]:execute
ex-の次が子音と時は[iks]:expect
ex-の次が母音でそこにアクセントがない場合は[igz]:executive

 この法則は ex- だけに当てはまるのではなく、人名のAlexander にも当てはまります。また、luxury が[lʌksjuəri]と読み、luxurious を[ləgzjuəriəs]と読むことも説明できます。

 x はラテン語で[ks]と読んでいたので、元々は無声音を表していましたが、英語では次にアクセントのある母音が来た時だけ、有声音に読むようになったのでしょう。

 なおex-は元々ラテン語で「~から」という意味の前置詞です。

 この法則を知っていると、発音を覚えるのが楽になります。特に、execute や exhibit とその派生語の発音が覚えやすくなります。
 

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英単語の読み方(1)=語頭の e をどう読むか [英語学]

【2010年10月23日に掲載、24日に改訂】-英語には e で始まる単語がたくさんありますが、どう読むか頭を悩ませることがあります。(語頭以外の e の読み方も大変です。)

 英語では e を主に[i][i:][e]と三通りに読みますが、辞書でたとえば example などを引くと[igzæmpl][egzæmpl]と「イ」とも「エ」とも書いてあって、どっちを覚えたらいいか迷います。[i]だけや[e]だけが書いてある単語もあります。

 結論を言うと、e にアクセントがある場合は[e]と読み、アクセントのない場合は[i]と覚えるのがいいと思います。アメリカ人の発音を聞くと、大抵そうです。英単語は数千語記憶する必要があるので、一つ一つ[i]か[e]か覚えるのは大変です。

 e にアクセントがあって[e] と読む単語には、edit, educate, embassy などがあります。

 一方、e にアクセントがなくて [i]と読むべき単語は、さっき上げた example のほかに、effect, election, employ, enjoy, entire などがあります。こっちの方がずっと多いはずです。

 今回取り上げた単語は、フランス語やラテン語から英語に入ってきた単語で、接頭辞と語幹が結び付いた複合語です。every など英語固有の単純語は考慮に入れていません。

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オランダ語は英語とドイツ語の中間 [英語学]

【2010年06月19日に掲載、20日に掲載】-今晩、日本のサッカーチームはオランダと対戦しているし、月曜日のエントリーでオランダ語にも触れたので、今日はオランダ語を取り上げる。

 オランダ語は、英語とドイツ語を勉強した者には取っつきやすい言葉だ。英語とドイツ語の中間のような言語だからだ。外国語は20くらい勉強したが、オランダ語のように楽をした言語は他にない。1ヶ月で入門書をざっと終えることができた。(1ヶ月しか勉強していない。もう殆ど覚えていない。)

 オランダ語が英語とドイツ語の間に位置するのは、単語を並べてみると一目瞭然だ。

 英語 オランダ語   ドイツ語
 book  boek(ブック) Buch(ブーフ)
  name  naam (ナーム) Namen(ナーメン)
  good  goed(グッド)  gut(グート)

 文でも、オランダ語は英語とドイツ語の中間にある。
英語  I read this book.(私はこの本を読む。)
蘭語  Ik lees dit boek. (イク レース ディット ブック)
独語  Ich lese dieses Buch. (イヒ レーゼ ディーゼス ブーフ)

 3ヶ国語が、いつもこんなに似ている訳ではない。説明に都合がいいように選んだ。

 綴りだけでは読み方が分からなくてちゃんと比較できないから、不正確だが片仮名で読み方を書いた。(発音記号は同じ記号でも言語によって表す音が少し違うので、新しい言葉を始める時には気をつけた方がいい。)

・歴史
 3ヶ国語が似ているのは、どれもゲルマン語派の西ゲルマン語群に属すからだ。大本が同じだから、似ていて当然だ。

 北ドイツに住んでいたアングル人とサクソン人が4世紀中頃からブリテン島に渡り始めたので、英語は大陸のゲルマン語とは違う展開を示すことになった。

 オランダ語はドイツの北部方言とそっくりだ。だから英語はオランダ語と共通点が多い。よく「英語とドイツ語は似ている」と言うが、オランダ語にはもっと似ている。

 オランダ語の文法の基本はドイツ語と同じだ。名詞には文法上の性がある。分離動詞があって、前綴りは文末に置く。従属節では、動詞は節の終わりに来る。

 動詞の位置は、オランダ語とドイツ語の特徴だと思う。他の印欧語には多分ない。英語は英仏海峡に隔てられて、大陸の西ゲルマン語の影響は受けなかったのだろう。

・方言
 オランダ語はドイツ語の方言と言ってもいいくらいだ。ドイツ語の方言地図を見ると、オランダ語まで載っているものがある。(たとえば『木村相良 独和辞典』の見返しの地図。)

 両語は国境線で突然変わるのではなく、政治的な区分とは関係なく北から南に行くに従って少しずつ変化する。ドイツ北部の方言は標準ドイツ語よりオランダ語に近い。

 (ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語も国境で突然変わるのではなく、徐々に変化するようだ。ロシア語などスラブ語派でも同じかも知れない。)

 「オランダ語はドイツ語の方言と言ってもいい」と書いたが、これはドイツ語を基準にした場合の言い方で、本質的にはオランダ語とドイツ語は対等だ。

 ドイツ語が上位にある訳ではない。ドイツ語の方が有名で使用者が多いが、オランダ語は子音推移を経ていないので昔の姿を留めている。

 ドイツ語を勉強している人はオランダ語もやるといい。取っつきやすいし、視野が広がる。

 早大の独文科にいた森田貞雄名誉教授は、アイスランド語が本当の専攻だったので、同科にはアイスランド語も研究している教員がいるが、オランダ語の方がドイツ語の理解を深めると思う。大学教師がちゃんと研究をしていない一例だ。

・参考資料
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E8%AA%9E#.E6.AD.B4.E5.8F.B2.E7.9A.84.E3.81.AA.E7.99.BA.E9.9F.B3.E3.81.AE.E5.A4.89.E5.8C.96

http://ja.wikipedia.org/wiki/V2%E8%AA%9E%E9%A0%86

http://en.wikipedia.org/wiki/Dutch_language

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